みらっちの読書ブログ

本や映画、音楽の話を心のおもむくままに。

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小説・詩・ラノベ・文学・文芸・エッセイ

豊潤な文章の源がここに【星占い的思考/石井ゆかり】

石井ゆかりさんのLINE公式に入っている。 もう何年も、毎朝7時に、今日の星占いが届く。 毎日だから、ちゃんと読む日もあれば、流し読みの日もある。スルーしてしまう日もある。それでもやめる気はない。石井さんの占いの「言葉」が好きだから。 つい先日、…

芸術論であり文学論【ギケイキ3/町田康】

ついに。 待ちに待って5年、ついに出ました『ギケイキ3巻 不滅の滅び』。 実際、最初の行を読んだとき「あれ?2巻はどこらへんで終わったっけ」、と、途方に暮れた気分になりましたが、すぐに世界に没入。そうだったそうだった、前回は吉野山で静御前と別…

中世と絶妙に相性がいい【町田康】

町田康さんはミュージシャンです。常々、音楽と文学というのは密接な関係にあるんじゃないか、と思っています。音楽家でもあり作家である町田さんが「琵琶法師」の世界を描く。もうそれだけでわくわくします。 「ギケイキ」は「義経記(室町時代に成立したと…

追悼 山田太一さん【『ふぞろいの林檎たちⅤ/男たちの旅路<オートバイ>山田太一未発表シナリオ集』頭木弘樹・『異人たちとの夏』/山田太一】

山田太一さんが亡くなりました。 まさか酒見賢一さんに続き、こんなにすぐに山田太一さんの追悼記事を書くことになるとは思いませんでした。 いえ、思っていなかった、というのは少し語弊があります。 先月、山田太一の未発表シナリオが見つかって、それが書…

コロナ禍における稗史としての日常の記録【東京ディストピア日記/桜庭一樹】

www.kawade.co.jp コロナ禍の日常の日記の出版が増えているそうです。何が起こって、どんなことを感じたか、の日常の記録。 コロナ禍となり1年以上が経って、もっとこういう作品が乱発されるかなと思ったのですが、さすがにSNS全盛の現代、毎日のつぶやきはS…

追悼 酒見賢一さん【泣き虫弱虫諸葛孔明/酒見賢一】

みらっちです。 ここのところ連投になってしまいますが、今日はショックのあまりの投稿です。 酒見賢一さんが亡くなりました。 59歳とのこと。早すぎます。 酒見さんのことは、いつかブログに書く予定で、ずっと温めていました。まさかこんな形で書くことに…

『本は、これから』から約13年経った今、本は【本は、これから/池澤夏樹編】

こんにちは。みらっちです。 私の友人の金森なごみさん(仮名)の息子さんは、息子と同い年の高校1年生です。 仮にヒカルくんといたします。 彼は私がこの「はてなブログ」を始めたころから私のブログを読んでくださっている、稀有な存在です。母のなごみさ…

清々しい読後感が味わえる一服の清涼剤のような物語【武士とジェントルマン/榎田ユウリ】

榎田ユウリさんは、BLやライトノベルの作家さんだそうです。読後、久しぶりに清々しい読後感を味わいました。 しいて言うなら、これに似た爽やかさ。 books.bunshun.jp こちらは青春スポーツ小説です。武士(宮本武蔵)に憧れる剣道少女が出てきます。 さて…

日本SFの巨匠かく語りき【ジャックポット/筒井康隆】

筒井康隆さんは、言わずと知れたSFの大家。少女の頃夢中になって読んだ日々は遠い昔となり、その後断筆宣言や炎上騒動など、様々なことをニュースや雑誌などで目にするも、作品からはしばらく遠ざかっていました。息子さんの訃報の記事とともに、この2月に新…

氷室冴子さん、また会えましたね【さようならアルルカン/白い少女たち 氷室冴子】

ブログで少女小説を取り上げたときに、「コバルト文庫で当時は新井素子さんに夢中だったのだが、今思い出すのは氷室冴子さんだ」ということを書いたことがあります。 するとその直後、友人から「氷室冴子さんの新刊本が出るらしいよ」ということを聞きました…

結局自分とつきあうのが一番難しい【藤原伊織】

『ダックスフントのワープ』は藤原伊織さんのデビュー作です。集英社文庫も文春文庫も、すでに絶版のようです。 books.bunshun.jp 1985年発表で、すばる文学賞受賞作品。集英社文庫版の解説は大学の同窓生であった宗教人類学者の植島啓司さんで、それによる…

歴史と人間への温かな視線にハマる【司馬遼太郎】

没後25年程経ちますが、ある程度人数が集まった無作為な集団で「司馬遼太郎の影響を受けた人」と問いかけたら、まだまだかなりの人数の手が上がるだろうと思います。 今の若い方はどうかわかりませんが、昔若かった私世代(ご推察ください)の同輩の方々は、…

多和田成分を補充中【地球にちりばめられて/多和田葉子】

お久しぶりです、みらっちです。 ついに老眼鏡を買うことにしました。 強度近視なので、眼底の心配はしていましたが、老眼に関しては「まあこんなもんだろう」と思っていた私。 しかし最近、どうも本が読めないのです。 読む気がないわけではないのに、積読…

わりと人生を豊かにしがち【少女漫画3選/高校生編】

こんにちは。みらっちです。 高校時代。 わたしちょっと、病気をしてしまいまして。 それで半年くらい、あんまり本や漫画が読めなかった時期がありました。 あれは辛かったですね。 読めない、ということが。 なによりも辛かったです。 拷問に近かったです。…

わりと人生を狂わせがち【少女漫画3選/中学校編】

あけましておめでとうございます。 みらっちです。 今日から仕事始め。 ブログも今日から再開です。 今年もよろしくお願いします。 2022年第一弾は、昨年からの続きで「少女漫画3選」。 今回は中学校編です。 中学時代は、以前書いたことがありますが、私の…

コロナ禍、何を読んだか、何を読むか vol.2【日本古典と感染症/ロバート・キャンベル編】

こんにちは。みらっちです。 コロナ禍、何を読んだか。何を読むか。 2019年~2021年に読んだ本のまとめ、第二弾です。 この状況下で起こっていることに興味があり、できるだけ事象に関連したり、学ぶことができる本を読みたいと思っていました。その記録にな…

エッセイの師匠4【食べる/ドリアン助川】

こんにちは。 みらっちです。 前回に引き続き、文章、特にエッセイを書くにあたり、影響を受けた作家さん。 ミュージシャンの方が書くものに、非常に心惹かれます。 古くは中島らもさん、町田康さんや大槻ケンヂさんのエッセイにも衝撃を受けましたし、星野…

エッセイの師匠3【ミステリーの掟102条/阿刀田高】

こんにちは。 みらっちです。 前回に引き続き、文章、特にエッセイを書くにあたり、影響を受けた作家さん。 今回は、阿刀田高さんです。 完全にシリーズ化しているみたいになってますが、特に意識しているわけではありません。 そして、影響を受けた順番で書…

エッセイの師匠【スバラ式世界/原田宗典】

こんにちは。 みらっちです。 文章、特にエッセイを書くにあたり、影響を受けた作家さんがいます。 原田宗典さん。 もしかしたら一時期、ハマっていた、という人は多いかと思われます。 そう。一時期、です。 原田さんはある日、薬物所持で捕まってしまった…

武侠小説の楽しみ【射鵰英雄伝/金庸】

こんにちは。 2018年10月、「華人のいるところ、必ず金庸の小説がある」と言われた金庸(きん・よう/ジン・ヨン)氏が94歳で亡くなりました。もうあれから4年も経つのですね…時の流れは速いです。 ワタクシ、金庸と名前を聞いただけで、血が湧きます。 数多…

仮面と悪【はてな10周年特別お題:好きな〇〇10選】

はてなブログ10周年特別お題「好きな◯◯10選」 以前どこかで書いたことがあったかもしませんが、私は「好きな〇〇はなんですか」という質問が苦手です。あれもこれもと迷って決められないんですよね。 いつかズバッ!と答えて「我が人生に一片の悔いなし」と…

書きたい時代の読まれ方【読んでほしい/おぎすシグレ】

こんにちは。 Twitterで書店などをフォローしているので、リツイートされた書評のネット記事を見かけることがあります。 特にダヴィンチニュースの新刊情報は本当によくできているのです。読みたくなってしまうのです。 必死に堪えるのですが、ライターさん…

サバランみたいな味わい【月まで三キロ/伊与原 新】

こんにちは。 伊与原 新(いよはら しん)さんのお名前は時折目にしていましたが、これまで読んだことがありませんでした。 www.kinokuniya.co.jp 『月まで三キロ』は、第38回新田次郎文学賞を受賞された作品です。2018年。 とても面白かったので、現在『八…

崎陽軒の弁当は、シュウマイじゃなくてシウマイ【ばにらさま/山本文緒】

こんにちは。 『ばにらさま/山本文緒』を読みました。 2021年9月13日刊。 www.kinokuniya.co.jp 短編集です。 短編って、難しいと思います。 長編なら、伏線を回収したりする余裕がたっぷりあり、説明や盛り上がるクライマックスシーンをいくつも入れ込むこ…

風に乗って「燃え剣」の話【燃えよ/藤井風】

こんにちは。 昨日、藤井風さんの新曲が配信になりました。 『燃えよ』。 どうして風さんはいつもこう、耳に残るフレーズをこれでもかと繰り出してくるのか… 前回の曲が『きらり』。 こちらも何度もリピートしてしまう曲です。 私のブログ、前回の「爆発」に…

想像力は最高の音響効果②【ピアノ編】

こんにちは。 以前、「想像力は最高の音響効果①」を書いたときに、音楽を題材にした漫画や映画を楽しむためには、脳内で音楽を再生する手間暇が必要で、そしてそのための想像力を巧みに刺激する演出というのがあると思う、ということを書きました。 miracchi…

「推し」は世界を救う、かもしれない【推し、燃ゆ/宇佐美りん】

こんにちは。 先日久しぶりに通販のカタログを眺めていたら『推しの祭壇にピッタリ!』と言う惹句が目に入りました。 推しの祭壇、とは、自分の好きな人物に関連するグッズを、神棚のように棚に飾り付けることを言うそうです。 ついに通販で専用棚が売られる…

心に撒かれた種が時間差で花咲く【白河夜船/吉本ばなな】

こんにちは。 以前、村上春樹について書きました。 村上春樹『ノルウェイの森』の出版と同時期に鮮烈な印象を持ってデビューして、一躍大人気となり、売れっ子作家となったのが、吉本ばななさんです(なんかすみません、村上春樹は敬称略で吉本さんは吉本さ…

ものすごくハマって急激に冷める、ということがある【森博嗣と京極夏彦】

こんにちは。 熱が伝わりやすくて冷めやすいのはアルミの鍋だそうです。 熱が伝わるのが遅いけど冷めにくいのは土鍋やホーロー。 今はアルミとステンレスの合金とか、フッ素加工とかいろいろあるので、鍋を選ぶのもそう簡単ではありません。 私はお料理が苦…

弱者を作り出しているのは誰(※センシティブな話題を含みます)【炎炎ノ消防隊/大久保篤・彼女は頭が悪いから/姫野カオルコ】

こんにちは。 子供が小学生のころボランティアで「読み聞かせ」をしていました。 実は「読み聞かせ」という言葉を聞くと複雑な気持ちになります。子供たちの視点から見ると「読み聞かせられ」になり、少し一方的に感じてしまうのです。 「読み聞かせ」はすっ…