みらっちの読書ブログ

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「光る君へ」の予習にぜひ【大塚ひかり『嫉妬と階級の『源氏物語』』】

 

 謹しんで新年のお慶びを申し上げます。

 昨年は大変お世話になりました。

 今年もよろしくお願いいたします。

 

 今年の大河は『源氏物語』を題材にした『光る君へ』。

 いよいよ今夜から放送ですね。

 

 私は毎週金曜日に、自分のWEBサイトのつぶやきというかエッセイを更新しているのですが、今週はこんな風に書きました。

 

源氏物語は、私は入り口が「あさきゆめみし」でしたが、それなりに各源氏に触れて来たような気がします。

 私が好きなのは、角田光代さんの源氏物語で、あまり好きではないのが瀬戸内寂聴さんと林真理子さん。

 持論ですが、あまりにも男と女の恨みつらみを前面に押しだすと、全く面白くないんですよ、源氏物語は。

 実は源氏物語は、政治闘争に巻き込まれる女たちの話なんです。だから、ある程度ジェンダー的な視線は必要ながら強すぎてもなんかこう、ダメなんです。

 恨みつらみの部分は六条御息所が全部引き受けてくださいますんで、「あなたはどうして私を愛してくださらないの」的なところは比較的さらっと、むしろ政治抗争と男の野心と嫉妬のドロドロをちゃんと描いてくれた方が面白いのです。

 

 今度の大河はリアルなザ・律令制の貴族社会と、物語としての源氏物語をどう折り合わせていくのかに興味津々です。

 

 noteでは年単位で少しずつ自力で『源氏物語』を現代的に翻訳されている方がいて、予習復習としてその方の『令和源氏』を冬休みにまとめて読ませていただくとともに、さらなる予習復習として、大塚ひかりさんの『嫉妬と階級の『源氏物語』』をついさっき読み終わったところです。

 

www.shinchosha.co.jp

 

 準備は万全です。笑

 

 大塚さんのことは『ギケイキ』の解説を読んで初めて知りました。それ以来注目している古典エッセイストさんです。

 今回直近で刊行されXTwitterでも紹介していらした2023年11月発売の『やばい源氏物語 (ポプラ新書 )』を予習に使おうと思っていたのですが、いずこかの書評で上記の『嫉妬と階級の「源氏物語」』をより平易に書かれたものだと聞き、それならばと『嫉妬と階級の「源氏物語」』を読むことにしました。

 

 これは――特に「宇治十帖」の考察が見事でした。

 

 私はやはりどうしても本編である「源氏物語五十四帖」の方ばかりに目がいき、宇治十帖はどうにもうじうじしている薫くんが好きになれず、綺麗なだけで可哀そうな浮舟とか、なんか勝手な人たちしか出てこないと敬遠して読み飛ばすことが多かったのです。いやはや今回、こんな物語だったっけ!?というくらいの華麗なる大塚さんの指摘に、目から鱗が落ちました。

 

 また、以前読んでこちらのブログにも書いた酒井順子さんの『平安ガールフレンズ』が思い出され、私のなかではその対比も面白かったです。

 

miracchi.hatenablog.com

 

 というのは、酒井順子さんは清少納言推し。どうしても紫式部にあたりが強かったのですが、そこを大塚さんがこの『嫉妬と階級の『源氏物語』』で紫式部にとことん寄り添ってくださった感じです。

 

 酒井さんは『平安ガールフレンズ』の中で、清少納言と紫式部をともに受領の娘という同じ階級であるということに注目されていましたが、『嫉妬と階級の『源氏物語』』ではさらにそこが深く追及されていて、大変感銘を受けました。

 

 そもそも、歴史上紫式部が実在するか否かについては諸説あり、議論もあるようですが、現実にこうして1000年読み継がれている『源氏物語』が確固として存在する以上、「紫式部なんていたかいないかわからない」などと言うよりも、物語を通して当時の人間の社会、人間のあり方を知り、今となんら変わらない部分に学ぶという姿勢こそが、歴史を学ぶことなのではないかと私は思います。

 

 大塚さんは、紫式部は道長の娘のサロンの一大プロジェクトだったと、この本で仰っていました。そして、人間として女性として紫式部という個人の感性やものの見方、考えかたが、源氏物語には色濃く出ているという考え方を打ち出しています。

 

 さて、まずは大石静さん&吉高由里子さんの紫式部を、今夜からとくと拝見したいと思います。

 

 平安時代は決して平安なことばかりではなかったし、実際のところ、武士の世界が生まれる土壌を作り出し、ひいては私たちの現代の世界にも実は影響を及ぼしている「仏教」「荘園」という魔物の姿を垣間見られたら面白いなと思っています。