みらっちの読書ブログ

本や映画、音楽の話を心のおもむくままに。

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豊潤な文章の源がここに【星占い的思考/石井ゆかり】

石井ゆかりさんのLINE公式に入っている。 もう何年も、毎朝7時に、今日の星占いが届く。 毎日だから、ちゃんと読む日もあれば、流し読みの日もある。スルーしてしまう日もある。それでもやめる気はない。石井さんの占いの「言葉」が好きだから。 つい先日、…

「光る君へ」の予習にぜひ【大塚ひかり『嫉妬と階級の『源氏物語』』】

謹しんで新年のお慶びを申し上げます。 昨年は大変お世話になりました。 今年もよろしくお願いいたします。 今年の大河は『源氏物語』を題材にした『光る君へ』。 いよいよ今夜から放送ですね。 私は毎週金曜日に、自分のWEBサイトのつぶやきというかエッセ…

芸術論であり文学論【ギケイキ3/町田康】

ついに。 待ちに待って5年、ついに出ました『ギケイキ3巻 不滅の滅び』。 実際、最初の行を読んだとき「あれ?2巻はどこらへんで終わったっけ」、と、途方に暮れた気分になりましたが、すぐに世界に没入。そうだったそうだった、前回は吉野山で静御前と別…

中世と絶妙に相性がいい【町田康】

町田康さんはミュージシャンです。常々、音楽と文学というのは密接な関係にあるんじゃないか、と思っています。音楽家でもあり作家である町田さんが「琵琶法師」の世界を描く。もうそれだけでわくわくします。 「ギケイキ」は「義経記(室町時代に成立したと…

もしかして鬼殺隊と鬼灯さんは敵対関係なのだろうか【鬼灯の冷徹/江口夏美】

【鬼灯(ほおずき)の冷徹/江口夏美】。31巻(完結)。 morning.kodansha.co.jp 地獄の話です。 表紙の鬼灯さんはもちろん鬼。獄卒を統率する閻魔大王の補佐官です。 この漫画の閻魔大王はおちゃめなおじさまといった雰囲気で、鬼灯さんの上司として毎日亡…

エウレカと叫び、元栓を締める【エピデミック/川端裕人】

SARSが2002年から2003年で、新型インフルエンザが2009年。どちらも日本は水際対策によって免れた、あるいは最小の被害で済んだ、とされています。この作品は、SARSと新型インフルエンザパンデミックの間、2007年に出版されました。本格的疫学小説、だそうで…

新米母だったあのときの自分に届けたい【感染症とワクチンについて専門家の父に聞いてみた/さーたり】

「この本を新米母だったあのころの自分に渡してあげたい」と思います。 www.kinokuniya.co.jp 正直、妊娠するまでワクチンのことを真剣に考えたことはなく、妊娠時に様々な検査をしたときに初めて意識した気がします。考えてみれば、かつて昭和・平成の時代…

追悼 山田太一さん【『ふぞろいの林檎たちⅤ/男たちの旅路<オートバイ>山田太一未発表シナリオ集』頭木弘樹・『異人たちとの夏』/山田太一】

山田太一さんが亡くなりました。 まさか酒見賢一さんに続き、こんなにすぐに山田太一さんの追悼記事を書くことになるとは思いませんでした。 いえ、思っていなかった、というのは少し語弊があります。 先月、山田太一の未発表シナリオが見つかって、それが書…

コロナ禍における稗史としての日常の記録【東京ディストピア日記/桜庭一樹】

www.kawade.co.jp コロナ禍の日常の日記の出版が増えているそうです。何が起こって、どんなことを感じたか、の日常の記録。 コロナ禍となり1年以上が経って、もっとこういう作品が乱発されるかなと思ったのですが、さすがにSNS全盛の現代、毎日のつぶやきはS…

シルクロードへの夢と憧れがつまっている【神坂智子】

少女時代、というのがこのわたくしにも存在いたしまして、その当時「ど」ハマりしていたのが神坂智子さんです。残念ながら、引っ越しを繰り返すうちに手放してしまったようで見つかりません。そのため記憶を頼りに書いております。 どれがいちばん、とはとて…

繊細で優美、独特の世界に酔う【岡野玲子】

岡野玲子さんが好きです。 www.hakusensha.co.jp 2001年に手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。2006年に第37回星雲賞コミック部門受賞。 とにかく絵が繊細で優美です。そして幻想的。「筆」を使って作画されることが多く、まさに芸術です。そしてまた、岡野さん…

心に刺さると抜けなくなる【清水玲子】

「この1冊で私の人生が狂いました」…いえいえ、そこまでではないですが、でも私にとって「人生に食い込んでる感じ」がするのが、清水玲子さんです。ほぼほぼ、リアルタイムで追い続けてきた漫画家さんでもあります。 最初に読んだのは『ミルキーウェイ』。高…

妖しい魅力の物語が癖になる【山岸凉子】

山岸凉子さんは、少女漫画家24年組と言われる方々のおひとりです。山岸さんのほかには、青池保子さん、萩尾望都さん、竹宮惠子さん、大島弓子さん、木原敏江さん、樹村みのりさん、ささやななえこさん、山田ミネコさん、岸裕子さんなどがいらっしゃいます。 …

少女漫画の王道、てんこ盛り【戸川視友】

Amazonのアンリミテッドで読んだのが、戸川視友(とがわ・みとも)さんを知ったきっかけです。書店であまり見たことがないなと思ってネットをみたら、版元の「冬水社」は出版取次を通さない直販形式をとっているとか。もともとBL主体の同人誌サークル「吉祥…

少女漫画の神様は最後に希望をくれる【萩尾望都】

萩尾望都さんの漫画については、これまでもシミルボンで数々の投稿がなされいて、今更私が何かを付け加えるまでもありません。でもやはり連載には欠かせない漫画家さんだったので、大変僭越ですが、取り上げることにしました。 実は私、少女漫画の神様、と崇…

追悼 酒見賢一さん【泣き虫弱虫諸葛孔明/酒見賢一】

みらっちです。 ここのところ連投になってしまいますが、今日はショックのあまりの投稿です。 酒見賢一さんが亡くなりました。 59歳とのこと。早すぎます。 酒見さんのことは、いつかブログに書く予定で、ずっと温めていました。まさかこんな形で書くことに…

『本は、これから』から約13年経った今、本は【本は、これから/池澤夏樹編】

こんにちは。みらっちです。 私の友人の金森なごみさん(仮名)の息子さんは、息子と同い年の高校1年生です。 仮にヒカルくんといたします。 彼は私がこの「はてなブログ」を始めたころから私のブログを読んでくださっている、稀有な存在です。母のなごみさ…

夢見る時を過ぎても

こんにちは。みらっちです。 シミルボンの転載ではない「はてな」としての記事を書くのはとても久しぶりです。 こちらでのシミルボン転載をひと休みしたのは、とある記事のコメントにスパムのようなものが貼り付けられてしまったからです。3年以上ブログを…

清々しい読後感が味わえる一服の清涼剤のような物語【武士とジェントルマン/榎田ユウリ】

榎田ユウリさんは、BLやライトノベルの作家さんだそうです。読後、久しぶりに清々しい読後感を味わいました。 しいて言うなら、これに似た爽やかさ。 books.bunshun.jp こちらは青春スポーツ小説です。武士(宮本武蔵)に憧れる剣道少女が出てきます。 さて…

日本SFの巨匠かく語りき【ジャックポット/筒井康隆】

筒井康隆さんは、言わずと知れたSFの大家。少女の頃夢中になって読んだ日々は遠い昔となり、その後断筆宣言や炎上騒動など、様々なことをニュースや雑誌などで目にするも、作品からはしばらく遠ざかっていました。息子さんの訃報の記事とともに、この2月に新…

氷室冴子さん、また会えましたね【さようならアルルカン/白い少女たち 氷室冴子】

ブログで少女小説を取り上げたときに、「コバルト文庫で当時は新井素子さんに夢中だったのだが、今思い出すのは氷室冴子さんだ」ということを書いたことがあります。 するとその直後、友人から「氷室冴子さんの新刊本が出るらしいよ」ということを聞きました…

届けたい人に届かないもどかしさ【スマホ脳/アンデシュ・ハンセン】

この本を手に取る多くの方は「子供のスマホ問題」に悩んでいるのはないかと思います。 なにしろ帯に「スティーブ・ジョブスはなぜわが子にiPadを触らせなかったのか?」という惹句がついています。いやぁ、それ知ってるけれども。有名な話だけれども。いろん…

結局自分とつきあうのが一番難しい【藤原伊織】

『ダックスフントのワープ』は藤原伊織さんのデビュー作です。集英社文庫も文春文庫も、すでに絶版のようです。 books.bunshun.jp 1985年発表で、すばる文学賞受賞作品。集英社文庫版の解説は大学の同窓生であった宗教人類学者の植島啓司さんで、それによる…

リアルから学べと教えられる【養老孟司】

以前、養老孟司さんの講演を聴きに行ったことがあります。会場に入るときに、会場前の植え込みを覗き込んでいる姿をお見掛けしました。講演が始まって、虫を探されていたのだということを知りました。昆虫が大好きで、虫のいるところ世界中どこへでも出かけ…

恋愛だけじゃないんです青春は【佐々木倫子】

佐々木倫子さんと言えば『動物のお医者さん』『おたんこナース』など数々の大ヒットを飛ばしていらっしゃる人気漫画家さんです。 www.kinokuniya.co.jp もう、動物漫画の金字塔なので語るまでもないかと思います。この当時、ハスキー犬を飼うのが流行ってい…

歴史と人間への温かな視線にハマる【司馬遼太郎】

没後25年程経ちますが、ある程度人数が集まった無作為な集団で「司馬遼太郎の影響を受けた人」と問いかけたら、まだまだかなりの人数の手が上がるだろうと思います。 今の若い方はどうかわかりませんが、昔若かった私世代(ご推察ください)の同輩の方々は、…

多和田成分を補充中【地球にちりばめられて/多和田葉子】

お久しぶりです、みらっちです。 ついに老眼鏡を買うことにしました。 強度近視なので、眼底の心配はしていましたが、老眼に関しては「まあこんなもんだろう」と思っていた私。 しかし最近、どうも本が読めないのです。 読む気がないわけではないのに、積読…

「怖い絵展」を見逃したことを悔やんだ【災厄の絵画史/中野京子】

ランキング参加中読書 2017年に上野の森美術館で「怖い絵展」が開催された時、私は東京のとある街に住んでいた。 www.ueno-mori.org 駅のホームでポスターを見かけて、行ける、行きたい、と思った。にもかかわらず、半年後の引っ越しのことや子供のことでな…

2冊目の本は鈍器本

こんにちは。 みらっちです。 とても、とてもお久しぶりです。 夏の間に、2冊目の本を出しました。 note.com 電子書籍だけにしようと思ったのですが、知人の熱い希望により、紙の本にもいたしました。 note.com 紙の本は、なんと厚さが3センチあります。 …

夫婦は同じ穴の狢【春にして君を離れ/アガサ・クリスティー】

お久しぶりです。 『春にして君を離れ』を読みました。 言わずと知れたミステリの女王、アガサ・クリスティーのちょっとミステリっぽくないミステリです。 アガサ・クリスティーといえば『そして誰もいなくなった』『オリエント急行殺人事件』などとにかく名…