みらっちの読書ブログ

本や映画、音楽の話を心のおもむくままに。

友だち追加

想像力は最高の音響効果②【ピアノ編】

f:id:miracchi:20210903141012p:plain

こんにちは。

 

以前、「想像力は最高の音響効果①」を書いたときに、音楽を題材にした漫画や映画を楽しむためには、脳内で音楽を再生する手間暇が必要で、そしてそのための想像力を巧みに刺激する演出というのがあると思う、ということを書きました。

 

miracchi.hatenablog.com

 

今回はその続きなのですが、テーマは「ピアノ」です。

といえば、まずは、これ。

 

www.kinokuniya.co.jp

 

【のだめカンタービレ/二ノ宮知子】、全25巻。

2001年からの連載で、2010年に連載終了。その間にドラマ化され、ドラマスペシャルも作られ、最終的には映画化されました。フルオーケストラを従えた贅沢なロケも話題になりました。

 

ギャグ満載で面白いのですが(一応、ラブストーリーなんですよね?これは)、ドラマはホールの場面も多いので、じっくり演奏を聴いてみたくなります。だいたいが、サビだけ~とか、もうちょっと聴かせて…というところで終わる。これはもうどうしようもないですね。何時間あっても足りなくなります。笑

 

漫画もドラマも映画も大ヒットの「のだめカンタービレ」。玉木宏さんも上野樹里さんも今やご結婚されてお子さんもいらして。時の流れを感じます。

 

主人公の 「のだめ」こと野田恵さんは日常生活にままならないことが色々あり、問題も多い方ですが、とにかく天才(という設定)です。

 

この「天才」というのが、ピアノを題材にした物語には欠かせない要素

 

 それだけ芸術の世界には、努力や財力だけではいかんともしがたい、なんらかの「タレント」「ギフト」をもって生まれるということが、重要なのだろうと思います。スポーツもそうですね。圧倒的な「才能」というものには太刀打ちできない迫力と魅力があります。そこに努力が加わって、凡人のなしえない境地で人々を魅了してくれるわけですね。

 

ピアノは特に、漫画や小説などに取り上げられやすい楽器だと思います。また、映像化もしやすそう。ヴァイオリンなどに比べて、手から先だけの吹き替えが楽だからなのかもしれません。

 

ほかにも比較的新しいところでは『ピアノの森/一色まこと』などがありますね。そういえば『コウノドリ/鈴ノ木ユウ』のコウノトリ先生もジャズ・ピアニストでした。

 

天は二物を与えずといいますが、そうでもないですよね。医師で楽器を演奏される方って非常に多い印象です。脳みそが非常にハイスペックなかたが多いのだと思います。やはり天賦の才(あと財力?)。

 

www.kinokuniya.co.jp

www.kinokuniya.co.jp

 

さて、漫画でも大変な負荷のかかる脳内音楽再生。

小説となるとさらにハードルがあがります。

 

小説で音楽を扱う、というのは珍しくはないのですが、なかなかチャレンジングだと思います。脳内音楽構築力が確かならば、映像も絵もなくても、言葉の力だけでその甘美な響きをあますところなく受け止めることができるはずですが、聴衆が引き込まれうっとりしている、ということひとつにしても、漫画はコマや絵で表現することができるので伝わり度がめっきり違います。

 

最近では直木賞受賞作【蜜蜂と遠雷/恩田陸】が代表かもしれません。

 

www.kinokuniya.co.jp

 

ピアノコンクールを題材にしています。

誰がコンクールを制するか…

音楽家の巨匠が推薦する天才くんと、ピアニスト生命の起死回生をかけた元・神童、地方で生活者としてたゆまぬ努力を続ける挑戦者、そして華々しい経歴と財力に恵まれたスター。「天才」「神童」「努力家」「スター」典型的な4タイプのピアニストがしのぎを削ります。そこに、次世代の音楽家を発掘せんと、かつて名声を馳せたピアニストと指揮者が審査員として絡んできます。

 

こちら、私は映画のほうが良かったです。

漫画は漫画の、映画は映画の、アニメはアニメの良さ、というものがあり、一概に「こっちのほうが」とは言いづらいものなのですが、こちらに限っては。

 

もともと、恩田さんの作品は、ドラマ化、映画化などメディア化されやすいと思うのですが、映像化された場合の完成度がなぜか、原作より良くなる傾向があるように思います。もちろん、これは個人的な感想です。

 

たぶん、恩田さんの発想力とかアイディア、目の付け所がすごくいいのだと思います。そして制作側で何か加えたくなる「素材」の魅力にあふれているのかもしれないとも思います。

 

以前『悪夢ちゃん』という学園SFホラ―ファンタジーのドラマがあって、原作が恩田さんだったので『夢違』という原作を読んでみたのですが、「発想」だけを持ってきて、いったいどこをどうしたらあの原作があのドラマになるのか見当もつかなくて「えっ」と思ったことがあります。

www.ntv.co.jp

www.kinokuniya.co.jp

でもドラマはすごく面白かったんです。劇場版も作られています。むしろこちらもドラマの方が…(スミマセン。ほんと、個人の感想です!)。

 

原作がヒントやトリガーになって、そこから二次創作作品のイメージが膨らみやすいのかな、と思います。

 

それにしても、音楽を題材にした漫画や小説は、どうしても「映像化・アニメ化」したくなるものらしき気配が濃厚です。

 

創作曲などは特に、脳内で勝手な再生をするのにも限界があります。実際に音として耳で聴きたい!という欲求を抑えられなくなるものなのかもしれません。

 

また、そうやって「実際にこの耳で聴いてみたい」と思わせるのが作者の力量、というものなのでしょう。

 

音楽のプロの方は、逆に「映像化なんて、なんてことを!私の中の曲のイメージが壊れる!あの演奏家ではダメ」なんてことが生まれるのかもしれませんが、素人の私には、どの作品もとても楽しいです。

 

番外編として「想像力は最高の音響効果①」にも書いたのですが、映画としてはやはりこちらがすごい。

eiga.com

 

『アマデウス』(1984年)。モーツァルト役のトム・ハルスはほとんど吹き替えなしだったとか。日本公開時に映画館で見ましたが、モーツアルトが逆立ち状態でピアノを弾くシーン、いまだに忘れられません。音楽にまつわる場面にこだわりがいっぱいあったようですが、映画の限界ですべてが理想どおりにはいかなかったようです。にもかかわらずアカデミー賞総なめの作品。とにかく迫力があります。この映画でイタリアの作曲家サリエリさんはすっかり評判を落としてしまいましたね…

 

『不滅の恋/ベートーヴェン』(1994年)もう一度観たい、若かりし頃のゲーリー・オールドマン。元々ピアノをしていたらしく、こちらもほとんど吹き替えなしだったとか。

 

eiga.com

 

「神童」「楽聖」の音楽は、今、名だたる名演奏家の演奏を(演奏家が生きていれば、そしてチケットが手に入れば)生演奏でも、配信サ―ビスなどではいくらでも、聞くことができます。でも「作曲者本人の演奏」はまさに「想像力」を使うしかありません(そりゃ、そうだ)。

 

ピアノストとして、もし、時代関係なく誰のピアノ演奏を聴いてみたいか、と聞かれたら、ショパンもリストも魅力的ですが、私はなんといってもベートーヴェンです。

 

そもそも、その時代でも欧州の、よほどよい家に生まれない限り無理だったと思いますが。ベートーヴェンはずいぶん引っ越ししていたので、ま、じゃあ、大家さんでもいいか。笑

 

「なろう系転生」でもしない限り無理な相談ですね。