こんにちは。
文化祭の季節ですね。文化祭と言えば、バンド。
これって「イカ天」世代の思い込みでしょうかね?
というわけで今日は、バンドつながりで。
「SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん」
おそらく書店で見かけても手に取ることはなかったと思います。
最近は、中、見られないですしね。立ち読み三昧の平成初期までの頃なら、もしかしたら買ったかも。たまたまAmazonで見かけ(その時だけアンリミテッドだったのかもしれません)、なんとなく1巻読んでみた。ら、どうしても途中でやめられなくなってしまった、不思議な力のある漫画です。
紫織(しおり)はギターが好きだけどそれだけ。の地味な高校教師。
ある日部屋のクロゼットからヘンなおじさんが現れる。いや。外人だし。どっからどうみても、幽霊だし。彼はジミ・ヘンドリックスの幽霊で、27歳までに伝説を残さないと死ぬ、という呪いがかかっている、と紫織に言います。
ジミ・ヘンドリックスの幽霊って。タイトルは当然ジミヘンドリックスのバンド「ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス」をもじっているわけで、ダジャレ三昧の話かなぁと、実は最初、あまり期待がもてないなと思ったのですが、これが。
音楽は、もちろん漫画だから聞こえません。
なのに、音楽に溢れている。画力がすごいんだと思います。
シオリは当然、ジミヘンが乗り移っているのだからもう、ある日突然とんでもないギタリストになるわけですが、とにかく27歳まで間もないので、学校で部活を始めて、バンド結成して、そこで伝説をつくることにします。メンバーもバラエティに富んでいて、ひとりひとりのストーリーも盛り込まれ、周囲の人々もかなり「濃い」。音楽のすばる先生は強烈キャラです。気がつけばうわーっと音楽のエネルギーに飲み込まれていき、ほとんどスポ魂漫画じゃないか、と思うほど。パワフルな青春漫画です。
とはいえ、おそらく読者を選ぶ漫画だろうと思います。
そもそも「ジミヘン」とはなんぞや?というところから、「ロック」「ブルース」というワードでダメな人はダメだし、「こんな脳内再生、やってられるかーい、あほんだらぁ」と思ってしまえば終わり。
もし、「なんかすごい音楽が流れている…」と思い込めれば大丈夫。あなたはきっと、
映画「BECK」
も楽しむことができます。
この原作も漫画ですが、私は漫画は読んでいません。
主演は水嶋ヒロさん。監督は『トリック』などのドラマで知られる堤幸彦監督(どうでもいいですが私はこの監督の『TRIC』『SPEC』が好きです)。そのほかに、佐藤健、桐谷健太、向井理という、イケメンパラダイスなキャストで、当時もう、キラッキラした人たちが出ていた青春映画です。
佐藤健さんと水嶋ヒロさんといえば、仮面ライダー電王と仮面ライダーカブトですよ。
仮面ライダーマニアとしては見逃すことの出来ないキャスティング。
それで、どうしてシオリ・エクスペリエンスがお好みならこの映画も好きかもしれない、と言いますと、この漫画と映画が、
無音で音楽を表現する
というのが、巧みだからです。
「ピアノ」漫画にはよくあるんですよね。「いつもポケットにショパン」「のだめカンタービレ」「ピアノの森」と、数知れず。
バンドは、なかなか難しいです。まず弾いているのがひとりじゃない。楽器も一種類じゃない。そこに加えてボーカルがあります。特に声というのは「違う」といったら絶対「違う」ものではないか、と思うのです。表現を超えた何かが声にはあって、それを変えたら単なるカバーになってしまうし、声をもって「最高の歌声」というのは相当にハードルが高そうです。
セリフで「最高の歌声だ!」とか「素晴らしいギターテクニック!」と言っても、実際に演奏して万人が納得する形に持って行くというのはあり得ない話。万が一、その道のプロが演奏してエア楽器・口パクでなんとか吹き替えたとしても、それが「最高だ!」と100人が100人思うことはまずありません。
漫画なら当然、音はつかないわけですから、そこは想像に任されます。
シオリ・エクスペリエンスはなんだかものすごいパワーの画力で強烈にインパクトのある音楽を聴いた気持ちにさせられてしまいます。
でもちょっと、立て続けに何巻か読んだり、同じ巻を二回も読むと、疲れてしまいますね。読者が脳内でする作業が多すぎるんです、たぶん。笑。
BECKもそうです。佐藤健の歌唱シーンはほぼ、音がない。
佐藤健さんって、歌、上手な方だと思います。仮面ライダーでも挿入歌歌ってましたもん。でも、その声は聴くことができません。
映画では、歌っている映像だけで、なんかすっげー!、なんかかっけー!と思わされてしまう表現になっています。Wikipediaによると、それは原作者のハロルド作石さんの意向だったとか。
空腹は最高のスパイス、と言う通り、
想像力は最高の音響効果、かもしれません。
『BECK』は評価が真っ二つだったようで、興行的にはよかったものの(イケメン俳優と宣伝のおかげ…?)、映画や音楽の専門家からは酷評されたみたいです。バンドの映画で歌入ってないってどうよ?ということかもしれません。うーん設定上しょうがないよね。と大人の解釈で受け止め、自分の頭の中で「すんばらしい演奏や歌」を 再現できるかいなかが勝負の分かれ目。そのため、ちょっと斜に構えて批判的に見てしまうと、いっきにお粗末なことになってしまいます。
音楽を題材にしたエンターテインメントって、とても難しいと思います。
探すと案外なくて、最近での成功例としては「ボヘミアン・ラプソディー」のように実際の音源の活用でまるで過去のライブに来ているかのような臨場感を出したもの、くらいでしょうか(一部吹き替え部分もあるようです)。私観ていないんですけど、クイーンの大ファンの友達が感激していました。いつか観たいと思っていますが、家でPCで観たらだいぶ臨場感に欠けているかもしれませんね。
「アマデウス」など、正統派のクラッシックで演奏するシーンを多用する映画は、本当にすごい苦労をして作ったんだろうなと思います。ゲーリー・オールドマンのベートーベンの「不滅の恋人」、また観たいんだけど、どこでもやってないし、ツタヤにもない。なんでかなぁ。大人の事情でしょうか。
ミュージカルの映画は結構ありますね。ブログを読んでくれているお友達のNさんは、いつもいい本やいい映画を数々紹介してくれる方なのですが、彼女に紹介してもらった『レ・三ミゼラブル』はとても良かったです。小説の映画化ではなく、ブロードウェイのミュージカル版の完全映画化です。ヒュー・ジャックマンとラッセル・クロウ、アン・ハサウェイという有名どころの俳優さんたちが口パク吹き替えなしの現場で生歌唱!という、かなり贅沢な、『BECK』と対極にあるような作品です。
とにかく音楽映画というのは物語も大事だけれども「音楽」を堪能できるのが醍醐味というものですよね。
漫画は、もちろん音響がつかないエンタメなので、こう言った表現を取るほかなく、いろいろな漫画でこういう「無音こそ最高の音楽」方式を取っているわけですが、やはり画力というか、絵の説得力は結構大きくて、音楽そのものよりストーリーに重きを置いて、どんなにすごい演奏家か、ということを、脇役のセリフや生い立ち、ストーリーによって説明するパターンも多い気がします。が、シオリ・エクスペリエンスはそこのところ、かなり攻めの漫画。何ページも絵だけで魅せるシーンが続いて、確か後半ほぼ1巻丸ごとくらい絵だけ、みたいな巻がありました。
「27クラブ」というのがあって、この名前が知られるようになったのは1994年にカート・コバーン(ニルバーナ)が死んだあと、彼の死をジム・モリスンやジャニス・ジョプリン、ジミ・ヘンドリックスと結びつけるようになったからだということですが、統計学的なエビデンスはなくて、いわゆる都市伝説みたいなもののようです。才能あるミュージシャンの夭折というのは世間にインパクトを与えますが、事故や薬物乱用で、多くの有名人が27歳で命を落とすというのはそこに偶然ではないなにかを付け加えたくなってしまうものなのかもしれません。
この漫画では、この「27クラブ」のミュージシャンの亡霊が音楽を志す人に憑依していくようです。アメリカ人の青年に憑依したカート・コバーンがジミヘンをスカウトに日本にやってきてました。
まだまだ続刊のようですが、どうなることか…
勢いに押されて読んだ漫画で、しばらく忘れていましたが、また読んでみようかな。