みらっちの読書ブログ

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コロナ禍、何を読んだか。何を読むか【事実はなぜ人の意見を変えられないのか/シャーロット・ターリ】

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こんにちは。みらっちです。

 

前回、前々回と、お題がらみで少しお遊び回になってしまいました。

 

息子に「ああ、まあ、ちょっと独りよがりな感じが続いたよね」と言われ、納得しながらもそういうことは早く言ってよ、と思った私です。

 

そんなわけで今回は、少し読書ブログらしい記事にしようと思います。ちょっと真面目に、お蔵入りだったこちらを出しておきたいと思います。

 

 

 

コロナ禍、何を読んだか。何を読むか。

2019年~2021年に読んだ本のまとめです。

 

以前もこちらのブログのどこかでお話ししたことがあったかもしれませんが、この状況下で起こっていることに興味があり、できるだけ事象に関連したり、学ぶことができる本を読みたいと思っていました。その記録になります。

 

紀伊国屋書店のリンクが多いのは、私はアフリエイトやAmazonアソシエイトなどをやっていないので、あえてAmazonでないところから持ってきた、ということだけで、深い意味はありません。Amazonのリンク、HTMLにするとなんかものすごく長いし。

 

 

感染症の世界史 石弘之

まず「感染症とはなんぞや?」の知識が必要だと思い、大きな括りでのざっくりとした歴史が知りたいと思いました。孫氏の兵法にも言います。「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」と。戦いに勝つためには、まずは相手のことをよく知らなければなりません

 

本屋さんで近くにあったジャレド・ダイヤモンド「銃・病原菌・鉄」と悩んでこちらを買いました。直後、ナショナルジオグラフィックの「銃・病原菌・鉄」が動画で観られることがわかり「ちょっとラッキー」と思った記憶が。笑

 

guns germs and steel(日本語吹替)1/3 - YouTube

 

こちらの動画、お勧めです。面白かったです。進化生物学者のジャレド・ダイヤモンド氏が地政学的に見た人類史。さすがナショナルジオグラフィック、よくできています。ダイヤモンド氏の「文明崩壊」は読みましたが、こちらより断然面白いですし、なにしろ映像が秀逸です。

 

さて。感染症(との闘い)の歴史について書かれた本は多かれど、『感染症の世界史』は読みやすくわかりやすかったです。

 

感染症で明らかに「駆逐した」と言えるのは「天然痘」くらい。1980年、WHOは地球上から根絶したと宣言しました。でもそれだっていつ変異が起きてどうなるかなんて誰にも分りません。予防接種がなくなって免疫を持っている人が減り、そんなところに生物化学テロでも起きたらどうなることか。天然痘以外は全然まったく、根絶なんてできていないし、そもそも普通の風邪ですら治せないし、ほとんど予防と免疫だより(ワクチン含む)。だからこそ新型コロナウイルスがこうして猛威を振るっているのです。

 

印象的だったのは、ウイルスは人間と共存してきたもので、環境が変化すればそれに対応して変異し、人間の行動様式まで変えてしまうということです。石さんはネットのインタビューに答えて「いかなる生き物も天敵を失った瞬間から退化していくもの」ともおっしゃっています。天敵であり同胞でもある。人間の体内にもたくさんのウイルスが存在し、それが良い働きをしたり遺伝子の助けになっているものもあると言います。未来に対し、警告と絶望しか書いてないような本もありますが、石さんの論調は明るく、そこが良いと思います。

 

新型コロナとワクチン知らないと不都合な真実 山中 浩之/峰 宗太郎

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峰宗太郎氏は医師ボランティアの情報発信「こびナビ」のメンバーで、テレビや雑誌等にもよく出られていますが、このコロナ禍において特に正しい知識の啓蒙と誤情報駆逐に尽力されている方です。年末にこちらの書籍の続編が出るとのことです。他にもこちらの本(ムック本)を上梓されています。

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専門医が教える新型コロナ・感染症の本当の話 忽那賢志

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忽那先生もよくテレビなどでお見掛けします。こちらの本は、コロナ禍に沸き起こる色々な疑問に臨床医としてこたえてくれている本です。内容はもしかしたら少しだけ古くなっているかもしれません。それだけ、ホットな疑問に答えてくれていたと思います。

感染症とワクチンについて専門家の父に聞いてみた さーたり

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外科医であるさーたりさんが、改めて初歩的な疑問を小児科医で感染症専門家のお父さんにぶつけてみた内容を、マンガでまとめてあります。非常に読みやすく、わかりやすく、記憶に残りやすいです。ワクチンについて知りたいけど、何を読んでも難しいと感じられる方には、こちらをお勧めします。いっぱいワクチンを打たなければならない新生児を持つ新米ママさんにもお勧めです。

 

京大おどろきのウイルス学講義 宮沢 孝幸

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2020年3月ごろ、新型コロナがまだどんな感染症なのかもわからなかったころに、情報を発信していた京大の先生が書かれた本です。著者ご本人は、なんとなく途中からアレ?という方向に行ってしまったように思われたのですが(個人の勝手な感想です)、高校生にもわかりやすいように書かれたというこちらの本はとてもよいウイルス学の本です。これからウイルスのことを勉強したいと思う方にもよいと思います。石さんの『感染症の世界史』に出てきたレトロウイルスなどについても詳しくわかりやすい解説があります。

 

エピデミック 川端 裕人

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 小説としてとても面白かったです。こちらの本の世界ではエピデミック(一部地域での感染爆発)で収まりましたが、現実はこちらを超えてしまいました。今読むと断然面白い本だと思います。数理モデルを駆使する疫学者に焦点を当てた本で、疫学というものが、ベン図*1みたいな重なりがありつつ医学や科学ともまた違うものということがよく理解できました。

 

新型コロナからいのちを守れ! 西浦博

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疫学と言えば、2020年当初コロナ対策に当たった西浦さんは「8割おじさん」と揶揄されたり批判にさらされたりしていた姿が思い出されますが、疫学的視点から数理モデルを駆使できる日本でも数少ない専門家であり、西浦さんの提言はなるほどと思うものでした、こちら、上記「エピデミック」の著者川端裕人さんが聞き手として本としてまとめたもののようです。「エピデミック」の数理モデルに関しても西浦さんが協力されているそうです。コロナ禍の最初の頃の苦悩と苦闘と混乱が、よくわかる本でした。

 

WHOをゆく - 感染症との闘いを超えて 尾身茂

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分科会会長として毎日お顔を拝見しない日がないほどの日がありましたが、反面凄まじい批判にもさらされ続けている尾身さん。私は尾身さんのことをよく存じ上げなかったのですが、批判したり怨恨をぶつけたりしている人々を見るたびに胸が痛かったので、まずは本を読んでみましょうと手に取った本です。

 

臨床の砦 夏川 草介

www.kinokuniya.co.jp

小説として面白かったといえば、こちらも印象的です。こちらは当ブログでも記事を書きましたので、もしよかったらどうぞ。あ、スターが少ないのは、まだブログがクローズ状態だった頃のことなので、面白くないからじゃあありません、たぶん……たぶん……

miracchi.hatenablog.com

 

東京ディストピア日記 桜庭 一樹

www.kinokuniya.co.jp

コロナ禍での日常について、歴史の「正史」に対して「碑史」として書いたという桜庭さん。ある場所での人・モノ・出来事の定点観測が、「コロナ禍で何が起こったか」というリアルな事実を際立たせています。日常で感じることをつづった「日記文学」だと思いますが、それにしても、これを読むとあまりにもいろんなことがあってびっくりします。ひとつひとつが、自分とも密接につながった事象や事件なのに、きちんと書き留めておかないとこんなにも忘れてしまって、まるでこの2年空白だったような気さえするのが恐ろしいです。その空白を埋めてくれる本です。

 

現代語訳 流行性感冒 内務省衛生局編 西村秀一訳

www.kinokuniya.co.jp

100年前のスペイン風邪パンデミックの報告書です。基本的にデータですので、全部舐めるように読むと大変なことになります。それでも、当時日本が置かれた状況、そして諸外国がどう対応したか、ということも数字でわかります。どんな地域からどのように始まり、どうやって流行し、どう収束していったかまで書かれています。当時の科学者たちは病原性ウイルスという存在は知っていたものの、電子顕微鏡が開発されるまでその目で見ることができず、インフルエンザも菌だと推測しその正体がわからなかったので、試行錯誤して本当に苦労していた様子がうかがえます。

 

FACTFULNESS(ファクトフルネス)ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド 著

www.nikkeibp.co.jp

 

今回のパンデミックはインフォデミックとも呼ばれています。SNSや動画など、情報に溢れた世界で、正しい情報を取捨選択していくのは極めて難しいです。こちらの本は、研究していたハンス・ロスリングさんの絶筆で、娘さんご夫妻が後を引き継いで完成させた本。執筆時すでに病床にあったハンスさんの心からの叫びに感じられることがありました。情報を「正しく」受け取るのは本当に困難だけれども、心の覆いを取り払って事実を見つめる方法が書かれています。とても大事なことを教えてくれる本だとおもいました。

 

陰謀論の正体!田中聡

miracchi.hatenablog.com

こちらも当ブログからの引用となりますが、ご興味のあるかたは良かったら過去ブログをご覧ください。そしてこちらも、スターが少ないのはクローズしていたせいですよ、たぶん……たぶん……

事実はなぜ人の意見を変えられないのか―説得力と影響力の科学 シャーロット・ターリ

www.kinokuniya.co.jp

こちらも目から鱗の本です。端的に言ってしまうと、人間は「魅力的で自分が信じる、自分が好きな人の言うことは聞く」動物であって、その人が言うことが事実かどうかは関係ない、ということです。だからこそ、インフルエンサーが存在し、数々の誤情報を鵜呑みにしてしまう人がいるのです。その仕組みについて詳しく丁寧に解説してくれる本です。

 

そして私がこの本をブログタイトルに持ってきたのは、「コロナ禍」とは、まさしくこの本で書かれていることが、毎日のように目の前で起こることであったと、瞠目した日々だったからです。私は孫氏の兵法に従いできるだけ様々な方面からの本を読もうとしてきましたが、もちろんそれだけでは不十分で、それが「事実」であるかどうかも、危ういことも多々、あります。しかしそれ以上に、誰かが言うことをそのまま受け取り、広めてしまうということのいかに多いことかを、まざまざと眼前にしてきた感があります。

 

他にも読んだ本があり、今回だけでは収まらないので第二弾も考え中です。

 

ちなみに上記の本の中には、「シミルボン」「ヒトが肉体を持つ限り戦いは続く」と言う連載に読書レビューを載せている本もいくつかあります。最近は「シミルボン」のほうには書いていませんが、もしご興味がございましたら、そちらもご覧くださったら嬉しく思います。

コチラ👇

 

ヒトが肉体を持つ限り戦いは続く

 

 

*1:複数の集合の関係や、集合の範囲を視覚的に図式化したもの。 イギリスの数学者ジョン・ベン によって考え出された