みらっちの読書ブログ

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少年よ神話になれ【星と星座の伝説】

こんにちは。

 

子供の頃好きだった本第五弾です。

タイトルはエヴァンゲリオンみたいですが今回はエヴァンゲリオンの話ではありません。

 

【星と星座の伝説/瀬川昌男】小峰書店 1978年初版

写真はネットから。

メルカリ - 瀬川昌男 星と星座の伝説 【絵本】 (¥3,333) 中古や未使用のフリマ

2009年に新装版になって、それも今は中古でしか買えなくなってしまったようです。

またしても絶版、ということでしょうか。

 

この本は私の「原点」に近い本です。小学校の図書室で借りて繰り返し読みました。お気に入りは「冬」。大地の女神デメテルと娘のペルセポネの出てくる、どうして四季が生まれたか、というお話。たしか「冬」に書いてあった気がするのですが記憶違いならすみません。「春」のナルキッソスのお話も好きでした。神話や伝説って神様が怒ったり泣いたり嫉妬したり人間らしい感情に溢れていますよね。

 

雷が落ちたら「神様が怒ってるんだ」と思う、神話にはそういう素朴でプリミティブな感覚があって面白いです。『ワンピース』ファンなら雷と言えばエネルを思い出すかもしれませんが、雷と言ったらやっぱりギリシャ神話のゼウス。北欧神話のオーディンも雷を使いますね。日本だと雷神、ホノイカヅチノオオカミ、タケミカヅチの神様は鹿島神宮の神様ですね。Wikipediaで雷神一覧を検索すると、古今東西、とんでもない数の雷の神様がいらっしゃるので驚きます。その神様のひと柱ごとにお話があるのがすごいなと思います。

 

ゼウスは女神・人間・妖精・精霊、手あたり次第に口説くし、時には性別も不問。人間だったら犯罪確定みたいなことをしますが、それを小学生の私は別段気にもせず、神様って面白いなーと読んでいたわけです。しかも神様なんだけれど、ゼウス様、という感じではないんですよね。著作物の記述もゼウスは…というものが多い気がします。神様がいっぱい出て来るので全部に様を付けられない、というので敬称略。なのかもしれませんが。

 

神話にはいわゆる象徴というかシンボリックな意味合いがあって、ゼウスの浮気はつまるところ「この世の豊穣」を表してるとか、その結びつきによって生まれる存在に意味があるとか、そういうことは大人になってから知るんですよね。ゼウスの暴虐の真実も。牛になって女性に近づいて有無を言わさずとかありえないですけどね。笑。でもまあ、子供も大人も、ちゃんと話のエッセンスはつかんで楽しんでいる、そんなところが面白いなと思うのです。

 

こういうシンボリックなことを人類は無意識で共有している、と「集合的無意識」を説いたのが心理学者のフロイトやユングで、尊敬する故河合隼雄先生はスイスのユング研究所で学んだわけですが、以前「おはなしのたからばこ」のところでお話したように、現在はどうもユングは特に「オカルト」に分類されてしまって、現在ユング研究所ではコーチングとか教えてるみたいです。時代の流れですよね。神話の解読には故河合隼雄先生の名著がたくさんあります。とっても面白いですけどねぇ。

 

【星と星座の伝説】では、星座にまつわるお話はおもにギリシャ神話だったと記憶していますが、中国や別の地域のお話も書いてあります。今、写真で「夏」の表紙を見る限り、有名な織女(織姫)と牽牛(彦星)のお話ですよね。アルタイルとベガ。『仮面ライダー電王』の隠れたモチーフでもあります(あっ、すみません関係ないけど、つい。関係ないついでに星空と宇宙つながりでは『仮面ライダーフォーゼ』もあります。JAXA全面協力)。

 

雨や曇りの日は織姫と彦星は会えない、と言われていますが、中国にはそんなときはカササギが羽を広げて連なって橋になるという伝説があります。表紙の絵に鳥が描かれているので、たぶん、本にも書いてあったんですね。私はすっかりうろ覚えで、今回改めて調べたら、「烏鵲橋(うじゃくきょう)」とか「烏鵲(うじゃく)の橋(はし)」っていうそうです。烏鵲はカササギのことなんですね。橋が架かるのは①晴れの日のみ、②雨天時のみ、③晴天時はおろか雨天時は洪水になって烏鵲橋もかからない(いつかかるんだろう?)、という3パターンの伝説が存在するそうです。この本がどのパターンだったか、残念ながら覚えていません。

 

かささぎの渡せる橋におく霜の白きを見れば夜ぞ更けにける(大友家持)

 

こんなふうに百人一首の歌にも歌われています(この歌はちょっと謎が多い歌らしいです)。

 

子供の頃は「神話」とか「伝説」とかがもう、キラッキラしたものに思えていました。

どんな人気アニメもゲームも、元をただすと行きつく場所があったりします。

 

『進撃の巨人』だって北欧神話だし。

スマゲーのドラゴンだって、想像上の生き物で神話頻出動物(動物?)。

 

現代のあらゆる「世界観」は元ネタなしにできるものではなく、「神話」「伝説」は元ネタの宝庫です。「元ネタ」は知れば知るほどそのコンテンツを楽しめるので、子供たちにはぜひ、そっちのほうをいっぱい仕込んでほしいなと思います。将来エンターテインメントを制作する側になったときにも、きっと役に立つはずです。インターネットのない時代に世界中の遠く離れた地点でどういうわけか共通する物語もたくさんあります。

 

小学生の頃【銀河鉄道999/松本零士】というアニメーションにハマり、学生時代は【銀河英雄伝説/田中芳樹】にもハマりました(これなんか銀河と伝説のふたつもタイトルに入ってる!)。大学の卒論は【銀河鉄道の夜/宮沢賢治】。昔から【銀河(galaxy)】と名のつくものが大好きでした。

 

galaxyという言葉もギリシャ神話に関係していて、ゼウスに息子のヘラクレスが生まれて(これもすごい過程を経て出産に至るのですが)、半神半人のヘラクレスにどうしても不死というスペックを加えたいゼウスは、妻ヘラの乳を飲ませようとします(ヘラの乳を飲むと不死になる)。でも浮気相手の子供だから当然ヘラは面白くない。だから拒否です。そりゃそうだ。でもなんとか飲ませようとして、ヘラが寝ているときにヘラクレスをそばに置いておいて飲ませようとします(ゼウス…)。でも様子が変なので起きたヘラはびっくりしてヘラクレスを突き飛ばし、その時に母乳が飛び散って天の川になりました…(galaxyは乳の輪、milkywayは乳の川)。

 

あ、あと、天文学では太陽系を含む私たちの銀河は「大文字のG」の銀河なんだそうです!これはさっきWikipediaで知りました。「Eのつくアン」みたい。笑。ほかの無数の銀河は「小文字のg」の銀河。そうやって区別しているそうです。androidのGalaxyはこの銀河のことなんですね~

 

 

学校で天体を勉強すると、まず地軸が傾いた地球から見た月の位置関係で何がなんだかわからなくなったりします。笑。現実の星ってそれ。うさぎもいないし餅もついていません。リアルな星のことを知りたい、と日夜努力をしながら、一方でそこに物語をくっつけた、というのが人間の凄いところだと思います。

 

昔の人は生きるための知識や知恵として、方位や位置や季節を教えてくれる「情報」として星や星空を見ていて、それが天文学や占星術や航海術になり、相対性理論になり量子力学になり、神話や伝説やファンタジー、SFにもつながりました。それらがいろんな風に絡まって、この世はできています。もちろん、物語だけではロケットは飛ばせないので、人間の現実的な努力と叡智が今のテクノロジーを作ってきたのは間違いないのですが、じゃあ物語が要らないか、ということになると、やっぱり人間には「物語」は必要なんじゃないかな、と思うのです。

 

宇宙に出て月や火星やISSから地球や宇宙を眺めても、もうそこには「星座」はないはず。「星座」は地球から見ているのが前提。天動説の領域です。本当に人類が宇宙に住むようになったら違う「神話」が生まれるのでしょうか。それとも、そうなったらもう人類は「神話」や「物語」を必要としないでしょうか。とても興味深いです。

 

早く人類、宇宙に出ないかな~