みらっちの読書ブログ

本や映画、音楽の話を心のおもむくままに。

地球サイズの地図を持とう【国境のない生き方~私を作った本と旅~ /ヤマザキマリ】

こんにちは。

 

ヤマザキマリさんのことを書きたいな、と思っていたら、たまたま、メルマガでこの記事が紹介されていました。最近、「その人のことを考えていたら、たまたまその人のことが書かれた記事を読む」というのが頻発しています。ちょっと面白い偶然。

 

digital.asahi.com

 

漫画家のヤマザキマリさんは、上の記事でもタイトルにあるように、『テルマエ・ロマエ』『スティーブ・ジョブス』『プリニウスとり・みきさんとの共著)』などの作品を手がけています。

テルマエ・ロマエ|アニメ声優・最新情報一覧 | アニメイトタイムズ

 

テルマエ・ロマエ』は、ローマ人のお風呂好きがテーマです。同じくお風呂大好き日本人とのご縁があったのか。ハドリアヌス帝の時代、主人公の設計技師ルシウスはお風呂に入っている時突然、お風呂の中に吸い込まれてしまいます。おぼれた、と思って起き上がるとそこはなんと日本の銭湯。まさかのタイムトラベルです。日本の銭湯からアイディアを得て、ルシウスが古代ローマのお風呂を改良改善していくというコメディ。

 

2010年マンガ大賞を受賞しています。同年、第14回手塚治虫文化賞短編賞受賞。同作品は2013年には仏アングレーム国際漫画祭に、2013年米アイズナー賞アジア部門にノミネートされています。2012年(平成24年)には日本で阿部寛主演で映画化されました。2016年には『スティーブ・ジョブズ』などの作品により、芸術選奨文部科学大臣新人賞(メディア芸術部門)を受賞されています。

 

さて、漫画のことも語りたいことは山のようにあるのですが、今日ご紹介するのはこちら。2015年のエッセイです。

 

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『持っている地図のサイズが「地球」』。

ヤマザキマリさんは「渡り鳥の人生」を選んだ地球人です。地球に愛される一種類の動物でありたい、と、ヤマザキさんは言います。

 

人間はそんなに立派なもんじゃありませんよ、非力で残酷で愚かな動物です。だけど地球に生まれたひとつの生き物として、与えられた命を精一杯生きたい。その動物を生かすのは情熱です。生きていていいから生まれて来たんです。生まれたからには命の光を輝かせたい。美しいものを美しいと思う。地球に生まれた感動を味わう。その全てが生きるということなんです

 

力説に、いつの間にか惹きこまれてしまいます。

 

そんなヤマザキさんを形作った壮大な「縁」と言うものが、この本には凝縮しています。膨大な量の本も映画も旅ももちろんですが、北海道の大自然の中で繊細と大胆を併せ持ち早熟でパンクな?少女時代を送る中、彼女に最大の影響を与えたのは彼女の母でした。ビオラ奏者で、大胆不適なシングルマザー。彼女の地球の地図は、母譲りだったわけです。母なくして彼女なし。

 

年齢が近いので、読書体験や享受した文化が似ているのですが、似ているけれどそこからの養分の取り方が全然違うことに愕然とします。そして17歳で単身イタリアに渡ってからは、もう時代とか国とか全く関係ない。ひとりの人間として敢然と命に立ち向かっていく地球規模の彼女の人生に比べると自分の人生が本当にちっぽけでつまらなく感じてきます。自分の矮小さを思い知らされて少し卑屈になってしまいそうですが「なんのなんの」とぐいぐい押してくるヤマザキさんに圧倒されてそんな余裕すらありません。笑。

 

 ヤマザキさんの興味は、古代ローマから南米の革命家まで広がりは時代を超えて果てしないもののです。いい!と思う価値基準が一貫しています。はみだしたもの、おさまりきらないもの、ダイナミックな、レアな、不思議な、宇宙的な…なんだかわからないけどとてつもなく心惹かれるなにか。彼女の好きな人や好きな作家、好きな作品。どれもが彼女の血や肉となり輝きになっているようです。読んでいると、研ぎ澄まされた審美眼でそれら全てを自分の生きる力にしてゆくのを、ただただうわぁ〜と感心しながら見せてもらっているような気がしてきます。

 

彼女を、突飛で非日常的な、奇特で変わった人だと言う人もいるでしょう。特殊な芸術家だから、そんなふうにのびのびと自由に生きられるのだと。そうかもしれません。滅多なことでは彼女と同じ様にはできません。きっとヤマザキさんは、情熱と教養が人を自由にするのだと言う生き証人なのだと思います。

 

まさに、タフで美しい鳥のよう。今の自分たちの輝きが、遠い未来の誰かを支えるかも知れない。だから閉じこもらず、自由に羽ばたいて精一杯生きるのだとたくさんの人に伝え、教えようとしてくれます。今目の前のことだけを見ているのではない鳥瞰した視線を感じます。野に出よう。本を読もう。そこにしかない真実があるから。

 

ふと立ち止まって自分を振り返り、悩んだとき。今のこの状態もまた然りですが、ヤマザキマリさんならこういうでしょう。自分で枠を決めるなんて、ナンセンス、と。わからないならわからないほど面白いじゃない。手探りで、前のめりになりながら、障害を避けながら、必死で生きるから人生は面白いと。とにかく力強く前を向いているのは間違いありません。

 

とにかく最初から最後まで、彼女の圧倒的なパワーに押されっぱなしですが「だいじょうぶだいじょうぶ、たいしたことないよがんばろ!」とバレー部の先輩に言われているみたいな(?)感じ。よっしゃー涙を拭いて明日からまたやるぞー!みたいに思えてくるから不思議です。地球人として生きれば、どんなことも大丈夫!そんな励ましに満ちた本です。