みらっちの読書ブログ

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タイムスリップして普通に生活してさらに恋愛できるのってすごい【アシガール/森本梢子】【満月/原田康子】

こんにちは。

 

次こそは漫画じゃなくて…と思っていたのですが、コミックスでほかにもなんかな~い?というリクエストがありましたので、ここ最近、私が続きを楽しみにしている漫画をひとつ。

 

「アシガール」。現在14巻まで出ています。

NHKでドラマ化もされ、先日も再放送されていました。

伊藤健太郎くんの「若君」と黒島結菜ちゃんの「唯之介(唯)」が役にぴったりで、楽しませていただきました。

 

最初の1巻をAmazonで衝動買いして以来「おおっ。これは近年になくヒット!」と思った作品です。

 

歴史のタイムスリップもの、「戦国自衛隊」や「信長協奏曲」などたくさんありますが、「アシガール」は主人公の女子高生「唯」のガッツがもう、素晴らしい。そして勢いのあるストーリー展開も、ギャグのキレっぷりもいい。

 

唯の弟、尊(たける)くんはとても優秀で頭がよく(というか天才)、ある日タイムマシンを完成させてしまいます。で、実験するのに、自分が過去に行くか、どうしようか、逡巡しているところに現れた「足が速いだけが取り柄」のお姉ちゃん。尊が迷っているうちに、さっさとタイムマシンを起動させてしまい、説明もろくに聞かないうちにあっという間に過去へ。

 

起動装置は短刀の形をしていて、鞘を抜くと起動するのですが、満月の夜に一回だけ、片道しか使えません。つまりは次の満月の夜まで現代に帰ることができないシロモノ。

 

さて、過去にタイムスリップした唯。そこにいたのは大勢の足軽たち。女子高生の制服と足軽の格好が微妙~に似ていて、男子だと間違えられたままなんとなく話を合わせて彼らと歩き出します。しかしさすがにお城に着いたらバレる!と思い逃げ出した先で若君に出会い、運命の恋に落ちた唯。彼がお城の若君だとわかると、若君のそばにいたいがために足軽に紛れ込み、自慢の足を活かして大活躍…

 

そこからの展開はぜひ、漫画でお楽しみいただきたいのですが、普通、女の子が戦国時代に行って足軽から出世してお殿様の嫁の座を狙う、という展開はなかなかない。「たまたま、お殿様に見初められる」などはまあ、ありそうですが、なにしろ出発点は足軽。若君の顔も見られないところから、身体を張って戦場へ!タフにポジティブに、アグレッシブに、若君に猛烈アタックです。それが痛快で、作中でも周囲の人がいつのまにか唯の味方になっているように、読者も気がつくと唯を全力で応援している、そんなお話です。

 

 

[森本梢子]のアシガール 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)

 

さて、1巻の巻末に、作者の森本さんのメッセージがあって、そこに

 

「原田康子さんの『満月』が好きで、時空を超えた恋にハマっていた」

「時空を超えた恋の結末がたいてい切ない別れなのも嫌だし、現代に生まれ変わって再び会う、というのもなんか違う。めでたしめでたし、には矛盾が生じる」

「でも寝ていたら急に布団の中でわたしらしい結末を思いついた!」

と書いてあって…

 

えっ。なになに、その結末って!!

すっごい、知りたい!!

 

と、なりますよね。私だけ??

その流れで行くときっとハッピーエンドなんだろうけど、いったいどんなハッピーエンドなんだろう??

 

12巻でいったん「第一部完」という状態になり、作者さんが「布団で思いついた」結末を知ることができましたが、作者さんの中にも周囲にもまだまだ~という勢いがあって、お話は続いています。

そうやって「まだまだ~」と粘ってしまうと、ちょっと残念な結果になる作品も多いですが、こちらはなかなか、楽しい展開が続いています。

15巻は11月の予定。今からとても楽しみにしています。

 

ところで原田康子さんの『満月』。

アシガールを読んで、そう言えば昔読んだわ、大好きだったわ、と思い出しました。

 

調べたら、すでに絶版だそうです。

実家にあるはずですが、実家を離れるときにすでに、表紙がかなり色あせていた…

 

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↑こんなに青だったとは。

水色の本だった、という記憶があって、それって単なる日焼けだったのね。

 

以下、ネタバレありますが、絶版の作品なので書いてしまいます。

 

満月の夜。札幌で高校教師をしているまりが河原で犬を散歩させていた時に、突如目の前に現れた弘前藩の武士、杉坂小弥太重則。彼はアイヌの老婆の術によって三百年の時を越えてタイムスリップしてきたのでした。期限は1年。その間、彼女の家に居候するのですが、まりとまりの祖母と三百年前の侍の同居生活が丁寧に描かれていたように思います。

 

小弥太は何やら政治的な理由だか何かの罪を犯した罰によってタイムスリップする羽目になったような気がしますが、これまた記憶が定かではありません。術をかけたアイヌのフチ(沖縄のユタみたいな存在)の言うことには、もし三百年後の世界で女性と恋愛をし一線を越えたら、二度と戻ってこられない、と告げます。小弥太には妻子があり、三百年前の世界に守るべきものが沢山ありました。だから帰らない、という選択肢はなく、当然、帰りたい。帰るつもりの1年間です。まりと小弥太は次第に惹かれあっていき、まりは割とマジに誘惑するのですが、小弥太はそれを振り切り、1年後の満月の夜、元の世界に帰っていきます。

 

この小弥太が、サムライらしく非常に誠実でストイック。すごく格好よかったです。「時空を超えた恋」、しかも「北国」。北国の恋愛、いいですね。そして恋愛に縛りがある切ないラブストーリーがいいです。簡単に両想いが成立してしまえば1年間ちょっと楽しんでいきました、的な話になって興ざめですが、そのあたり原田康子の筆致は硬めで真面目で、何とかなっちゃうようで何ともならないギリギリ感が良かったなあと思います。

 

「アシガール」の若君が現代に来て、高校生男子として生活をすることがあるのですが、「満月」にも小弥太が現代の服を着て生活を始めた時にその姿が素敵でまりが心奪われる場面が描かれていました。いわゆる女子の萌えポイントなのかな、と思います。現代の服を着ていても、現代の男性にはないもの、武道で鍛えた身体とか一本筋の通った精神、姿勢、みたいなものがにじみ出るところに萌えを感じる、のかもしれませんね。いわゆるギャップ萌え?

 

ただ、どちらの場合も女性がかなり積極的じゃないと恋愛成立が難しそう…

 

両方読むと二度楽しい、と言いたいのですが、「満月」は絶版なので図書館などに、もしあれば、ぜひ。