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ガンダムを語る日【スペース・コロニー 宇宙で暮らす方法/向井千秋著・監修】

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こんにちは。

 

ついに、この日が来ました。

「ガンダムを語る日」が。笑

 

昨年、自粛を機にこれまでちゃんと観たことのなかった『機動戦士ガンダム』の宇宙世紀シリーズをほぼ網羅しました。ほぼ、というのは、『Gのレコンギスタ』は途中、『Vガンダム』はまるまる観ていないからです。それと、宇宙世紀シリーズ以外はほとんど観ていません。1、2話観てやめてしまったのが多いです。

 

なので全部観たとは言えないのですが、ガンダムを知って以来、「私にとってガンダム前後、というくらい世界が変わった」(おおげさ)とまで言って友達や家族に熱く語り、『閃光のハサウェイ』も観るぞ~!と宣言していました。が、延期に次ぐ延期でようやく公開となった『閃光のハサウェイ』、まだ観ていません。なにやら、戦闘シーンがすごいことになっているとか。

 

ブログを始めて「ガンダムのこと書くね!」と勢い込んでいたのですが、なんとなくチャンスがなく、書きそびれていました。書く、となったらおっそろしく長いだろうという懸念もありました。

 

 

さて、今回はガンダムがメインではなく、こちら『スペース・コロニー 宇宙で暮らす方法/向井千秋著・監修』がメイン。2021年5月20日刊です。

 

ちょうど読もうと思っていた時に、はてなブログで基本読書さんが同じ本を紹介していらして、ああ、どうしようかな、とても近い時期だし、この素晴らしいブログの後には恥ずかしいな、ブログ書くのやめようかなと悩んだのですが、私のブログなど拙い零細ブログなのであまり多くの人の目に留まることもないであろうと思い、ガンダム絡みでまたちょっと違う角度から私なりの感想を書いてみることにしました。

 

huyukiitoichi.hatenadiary.jp

 

 

もう最初の1ページから

 

「こ、これは…ガンダムの世界ですよ、ねえ、ディアナさま!」

 

と興奮気味だった私。(ディアナさまというのは、『∀(ターンエー)ガンダム』に出て来る月面都市の為政者です。笑)

 

次々と紹介される新しい宇宙開発とテクノロジーに目を見張りながらも、ついつい、ガンダムを想起してしまうのを止められませんでした。

 

ですので、この本はブルーバックスで知識の宝庫なのですけれども、今回のこのブログでは、ところどころに(というかいちいち)ガンダムが出てきます。あるいはSF映画が。それだけ私が、現実が空想に近づいていることに感動していたんだな、と、感じていただければ幸いです。なにとぞ、ご容赦ください。

 

とはいえ、「おわりに」の最終章にも、

 

過去のSF映画やTVドラマでは、スペース・コロニーを主題にしたものだけでも数多くの話が作られており、これらの物語には、様々な示唆に富むものが多くあります。なかでも「機動戦士ガンダム」は、宇宙に住む人類の未来を予見しているようでもあります。もちろん宇宙での戦闘は、現実的ではありませんが、作中に描かれる月面都市は、我々のスペース・コロニー研究においても目指すところであり、本書で紹介したように、居住環境の構築や地球との交通手段の整備はすぐでも着手が可能なものとなっています。

(太字のところは私が強調しました)

 

と、あるのを読み、小さな興奮でちょっとソファから立ち上がってしまいました。笑。向井さんたちも「なかでもガンダム」というほどに、その近似性を感じていらっしゃるんだと思うと感慨深いです。

 

向井千秋さんが宇宙に行った時のニュースは、鮮明に覚えています。1994年にスペースシャトル・コロンビア号、1998年にスペースシャトル・ディスカバリー号に搭乗され、ご主人の向井万起男さんのエッセイなどが出版されたりして、当時、まさに時の人でした。万起男さんは宇宙兄弟に出て来るJAXAの那須田理事長のモデルでもあるそうです。

 

いまでこそ、野口さんや星出さん、山崎さんなど、たくさんの宇宙飛行士が活躍していますが、当時はまだ日本人の宇宙飛行士が珍しくて、特に日本では女性初の宇宙飛行士として大注目でした。宇宙飛行士以前のご職業は外科医で、石原裕次郎の担当医のおひとりでもあったとか。

 

その向井さんも御年69歳とのこと。ああ、時の流れは速い。現在は東京理科大学で特任副学長をつとめながら、スペース・コロニー研究センター長をなさっています。

 

この『スペース・コロニー 宇宙で暮らす方法』では、東京理科大学におけるスペース・コロニーの研究の紹介についてだけではなく、現時点の宇宙開発というものがどういうものかが、よくわかるようになっています。

 

AmazonのCEOジェフ・ベゾスさんが、一緒に6分間の宇宙旅行をする初の民間人を募集中!オークションで30億で落札された!というのを見聞きして、おお、すごいね、民間の宇宙開発もどんどん進歩しているんだな、それにしてもすごい金額だ~とは思うけれども、今現在、宇宙開発の全体像が、どんな状況なのか、というのは、ニュースを見ていてもよくわからないかたが多いのではないか、と思います。

 

かくいう私も、宇宙兄弟を読んでいた時の漫画知識くらいしかないし、それに今は地球上が新型コロナとの戦いでちょっとそれどころじゃない感じで、宇宙開発に関するニュースは、たとえやっていても、あまり頭に入ってこない感じがします。

 

そんなときの、こちらの本。現時点での宇宙開発がどんな具合なのか、問題点と解決に向けた研究の数々が具体的に紹介されていて、単発的に見聞きしていたニュースが、少しずつ繋がってくるとともに、現在身近なテクノロジーがいかに宇宙開発と一緒に成長してきているのか、ということを理解する手助けになると思います。

 

印象深かったところをいくつかピックアップしてみます。

 

宇宙開発は今どんな感じ?

ISSなどでこれまで培ってきた研究と技術が、いよいよ花開こうとしているようです。スペースXという民間初の有人輸送システムにより国際宇宙ステーションへの試験飛行があり、その結果を受けて運用第一号機に野口聡一さんが搭乗し宇宙ステーションに到着しています(先月無事ご帰還されましたね、お帰りなさい!)。また、地球周回軌道以遠への有人宇宙探査計画が進行中で、2024年にはアメリカ人の男女(女性は初)の月面着陸というアルテミス計画があり(アメリカ)、火星有人探査へ向けた研究も始まっているようです。月と地球の間を物資や人間が何度も往復できるようにするための月を基地とする「ゲートウェイ計画」もあり、それらが絵空事ではなく、とても具体的かつ現実的になってきていることに驚きます。

 

世界中があきらかに宇宙時代に突入したことを疑う余地はないようです。宇宙産業における日本の世界シェアは1%にとどまるということなので、なんか色々無駄なことにお金を使うなら、ここにお金を使った方がいいのではなんて思ったりもします。

 

また、将来の宇宙計画に役に立つ技術は現在の私たちの生活向上にも役立つとしてターゲットをしぼり、水や空気の浄化や、プラスティックやゴミなどのリサイクル技術、限られた資源を用いた効率の良い食物生産などの「デュアル開発」(宇宙計画と生活向上の2面に対し両得になる開発)が進んでいます。「持続可能な開発目標」であるSDG’Sは宇宙開発に密接に関係しており、抗菌防臭加工や光触媒などすでに身近にある技術もまた、宇宙への一歩につながっているそうです。

 

ただ、地球のゴミ問題も解決できていないのに宇宙でもすでにゴミ問題があって、読んでいると「まだまだ問題は山積みなんだな」とは思います。いかにしてゴミを出さずに宇宙開発をするか?というのがSDG’Sにつながる大きなテーマでもあるようです。

 

そういえば、映画『ゼロ・グラビティ』はスペースシャトルに宇宙のゴミ(デブリ)がぶつかって船外活動中の宇宙飛行士が宇宙に放り出されてしまうお話でした。サンドラ・ブロックが、中国の宇宙船にたどり着いて一命をとりとめていましたね。宇宙に放置された無人の宇宙船(まあこれもゴミと言えばゴミ)だけどなかったら、あの人死んでたわ…

 

それと、また人類が月に行くのは嬉しいです、単純に。私がアポロ11号が月に行った年に生まれたというのは以前のブログにも書きましたが、あれから長いこと月に行かないので「月に行ったなんて、嘘じゃん」みたいな陰謀論的な話も出てきたりして、どうして50年も月ほったらかし?みたいな気持ちでいました。ようやく、現実的に月に行く、だけではなく、なんと月に住んじゃおう計画まであるなんて、なかなか喜ばしいことではないですか。しかも今度は女性も行くという。火星にも行きたいという。頑張れ人類。

 

宇宙に行くと人間の身体はどうなるの?

宇宙で暮らしていると、急速に骨粗しょう症のような状態になり、筋肉が萎縮していきます。宇宙線の影響も受けるのでDNAレベルでのダメージも懸念されるし、また、血液量が減少し、心臓の機能が弱まるので、地球上と同じ様な心機能と身体の運動機能を維持するためには、なかなかハードなトレーニングを日々こなさなければならないようです。身体だけではなく、閉鎖空間で生活する精神的弊害についても研究が進んでいて、逆に言うと今のこの新型コロナウイルスでの自粛というのは、ある種の宇宙生活のシュミレーションみたいだという指摘にちょっと目から鱗でした。

 

 

ここから先は、個人的な、素朴な疑問と感想です。

ガンダムではコロニーの中は、空気組成などほぼ地球上と「同じ」空間が実現していたのですが(重力はコントロールされていた)、よほど「同じ」でない限り、人間の身体っていうのはいずれ、形が変わってしまうのではないでしょうか?宇宙に適したからだ、まさに「ニュータイプ」に…

 

この本で宇宙飛行士たちがこれほど短期間に身体に影響を受けている事実を知り、もし実際にガンダム世界のように「コロニー生まれ」や月世界の住人がいるとしたら、今の人類とは違う形になっているのでは?などと考えてしまいました。

 

 映画『インターステラー』では(ちょっとネタバレあります)砂漠化した地球から人類が住める惑星を探すために地球を飛び立った宇宙飛行士の父親が、学者になった地球にいる娘に時空を超えてスペースコロニーの重力制御のヒントを与えるという話でした。父親のミッションというのは、外宇宙の人類が住める惑星で、人間の受精卵を孵化させることだったのですが、失敗。このプランAは失敗しましたが、彼がブラックホール内に吸い込まれたことにより、重力制御のデータを知り、それを娘に送ることになります。そして地球はプランBであったコロニーを作るのです。

 

今は「月面住居スペース」や「コロニー」で、第一世代の人類がなんとか「生きて、生活する」ことを目標にしていますが、果たして宇宙に出た人間の生殖というのがどうなってしまうのか、繁栄を目指して宇宙に出た人類は、果たして「繁栄」できるのか。はたまた、「プラスティックの人工子宮」が現実になるのか…この本ではそこまでの記述はありませんでしたが、すごく興味深いです。

 

宇宙で自給自足生活ができるの?

水や空気を確保することについては、様々な困難な問題を抱えていて、一筋縄ではいかないようです。宇宙船を動かすにも、農業をするにも、なににしても、水や空気、エネルギーが問題で、そのエネルギーをどう作り出すか、使い捨てではなく循環させるためにはどうするか、ということも、本当に様々なアプローチで研究されているのだと知りました。小型原子炉を搭載したり、太陽を利用するためにシリコンや半導体、印刷紙を使ったり、はては人間の肉体までもがエネルギーになるという、すごい研究の数々に度肝を抜かれます。

 

でもこの研究が、ひいては地球の環境を救うかもしれない、というのは希望でもあります。地球全体で大量のごみを出して、これほど環境を汚してしまった以上、少しでも良い環境を取り戻すためには、とても重要な研究だと思います。

 

水を作り出すのに、空気を浄化した後の水分をリサイクルしたり、汗や尿を使ったり。エネルギーを確保するために汗の乳酸から電力を作り出したり。びっくりする研究が満載です。コロニーを作るというのは、宇宙空間に閉鎖された生活空間を作る、ということで、それは災害によってライフラインが絶たれた場合にも有効であり、こうした技術が実用化され、活かされていくのならばすごいなと思います。

 

農業技術の進歩も目覚ましいようです。水耕栽培のような技術で野菜を育てることや、袋の中でじゃがいもを育てる、といったことは実際にすでに行われています。しかし映画『オデッセイ』にあったように火星面でのプラントドームみたいなものが、実はすごく難しいのだということをこの本で知りました。土を使えば土中の微生物も生きていて呼吸しますし、菌やカビ、藻などでダメになることもあるそうで、「居住区」と「プラント区」を分けるのは当然としても、たとえ滅菌ドームの中でも、気軽に植物を育てられるというわけではないということには驚きました。

 

『オデッセイ』では火星にただひとり残された男が、育てているじゃがいもを毎日食べて、だんだん精神的におかしくなっていく場面もありましたが、実際に毎日同じもの食べ続けると食欲も減退し、精神衛生上よくないそうです。

 

ガンダムでは、居住コロニーの外を取り巻くように独立したプラントコロニーがありました(戦闘のあおりでシャアが穴を空けてましたけどね)。しかし、ああいった形で、居住コロニー以外にプラントコロニーを作るのは全く理にかなったものであったことをこの本で知って、さらにびっくり。

 

R2-D2やC3POみたいなドロイドが仲間に

宇宙船外での活動にはロボットが欠かせない存在になっているようです。アームのような手のかわりのようなものから始まって、ある程度自分で判断して動けるロボットも開発中とか。いよいよ、こちらもSFに近づいている気配です。向井さんたちは、「宇宙船にはロボットが搭乗するのが当然」と言います。単純な作業はロボットに任せ、複雑な作業は人間が遠隔に操作する、シェアード・インテリジェンスの実現が目標、とのこと。『スター・ウォーズ』に出て来るR2-D2やC3POみたいなドロイドも、もう夢ではなさそうです。

 

とはいえ、人間にできない作業をロボットがかわりにやるというのが意外と難しいのも知りました。特に必要な船外活動の場合、通信にタイムラグが生じる宇宙では、管制塔を通して指示を出してもその通りに動くまでにラグが生じるので、精密な動作が難しいことがあるようです。

 

向井さんたちは「おわりに」でガンダムに触れた際「戦闘は現実的ではありませんが」と書かれていましたが、ガンダムはこの「船外で働くロボット」の成れの果てなのです。最初はそうした、作業用ロボットでした。それを改良して、戦闘機にしたのです。今現在戦闘はしなくても、どんなものが兵器になってしまうかは、わかりません。

 

「おわりに」でも、ポケットベルの例を出し、「開発者は、12桁の電話番号を送るという機能が数字を文字に対応させてメッセージとして使われるとは思いもしなかっただろう」と言っています。テクノロジーというのは、まさかの使われ方をすることが往々にしてあります。ポケベルのような有用な使われ方はいいですが、ガンダムを生み出すのは、残念な方向の使われ方だったと言えるのかもしれません(って、過去形にするのは、なんだか変な感じですね)。

 

まとめ

というわけで、今私たちが宇宙時代のどの辺にいるか、というのを示してくれたこの本。まさにこれからの宇宙時代の歩き方、指南・案内本です。

 

また、宇宙での生活と現在のコロナ禍の生活を照らし合わせた記述も多く、「宇宙船内での生活の質は、気温、気圧、照明、居住空間の使いやすさが大前提、閉鎖された環境の中で健康で幸せに過ごすためにはこれら以外にも食べ物、睡眠、運動を適切にすることが大切なのです」ということは実に示唆に富んでいました。

 

これから必要な分野やテクノロジーも知ることができ、宇宙時代を担う中高校生には、特におすすめです。

 

今回出てきた映画

eiga.com

eiga.com

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