みらっちの読書ブログ

本や映画、音楽の話を心のおもむくままに。

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中学受験から半年が経ちました【エリート狂走曲】と【二月の勝者】

こんにちは。

 

先日、ブログがきっかけでお友達のご主人から漫画をお借りしました。

なんとずっと読みたかった本を持っていらっしゃったんです…!そして思いがけないお話からお借りする、ということに。ブログを始めなかったらたぶん、そんな機会に恵まれることはなかったと思います。Yさんありがとう!そしてYさんの旦那様、本当にありがとうございます。

 

【エリート狂走曲】弓月光

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今回お借りしたのはこの本です。

出会いは小学校の中学年。この世に中学受験戦争というモノが存在することを知り、「唯我独尊」という言葉を知りました。

 

東京に引っ越してきた片桐哲也は、田舎の野生児。転校した東京の学校では小学生が「いい学校に入っていい大学に行っていいところに就職してエリートになる」ために日夜必死に勉強していました。学習塾を「学習ネツ」と読んでいたほどの哲也は当然、それほど勉強ができるわけではありませんでしたが、唯という女の子と知り合ったのがきっかけで、最難関校を受験することになります。1978年初版発行なので、42年くらい前のお話ですね。

 

哲也の破天荒な行動は先生や親、子供たちを巻き込んで毎回大変な騒ぎ。基本はドタバタのギャグ漫画で、受験の悲喜劇を見事に表現、と言いたいところですが、哲也の動機はほぼ「思春期の助平心」で成り立っていて、明るいお色気満載、極端なやりすぎ感も満載です。過熱する受験戦争の風刺を絡めて思春期の男の子の妄想を描いた、というのが本当のところかもしれません。

 

中学二年生で作家デビューして話題を呼んだ鈴木るりかさんの【さよなら田中さん】に出てきた受験生の男の子(三上くん)も、田中さんに淡い恋をしていましたね。彼はちょっと、いろんな意味で幼く、可哀そうで悲ししい結末を迎えてしまいましたが、思春期とっかかり男子の(あるいはすべての男子の)モチベーションって結局そういうところにあるのかもしれません。

 

[鈴木るりか]のさよなら、田中さん

【さよなら田中さん】については、ほうぼうで紹介しているのでいずれこちらでも書くかもしれません。

 

【エリート狂走曲】に戻ります。

 

ちなみに昔はこういう漫画、良くありました。お色気系コメディというのでしょうか。「まいっちんぐまちこ先生」なんかもそんな系統でしたね。スカートめくりが流行ってPTAが…とか話題になってました。現代のお色気系は、お色気をはるかに超えてBLを含めかなりハードなので、戦中戦後生まれの方は知ったら驚くレベルだと思います。表現の自由は果てしない荒野。このくらいはっきりいって可愛い。そして思春期の男子のほんとのところがよく描かれていると思います。

 

弓月光さんは『りぼん』で一条ゆかりさんと同期デビューだったとか。『りぼん』『マーガレット』『月刊少年ジャンプ』『ヤングジャンプ』『ビジネスジャンプ』などで連載を続けていて70歳の現在も現役のようです。この漫画も初版はマーガレットコミックスから出ています。

 

息子の受験期、まさか自分が「リアルエリート狂走曲」を経験するとはなぁ~と時々、思い出していました。田舎で生まれ育って受験には縁がなかったにも関わらず、子供で経験してしまった、ある意味、予言の書?

 

さて、現代の受験と言うと、最近ではこちら。

 

[高瀬志帆]の二月の勝者 ―絶対合格の教室―(1) (ビッグコミックス)

 【二月の勝者 絶対合格の教室】高瀬志帆。『週刊ビックコミックスピリッツ』

インスタグラムなどのSNSで人気に火がついたようです。受験期間中に、同じ受験生ママのKさんから「これ知ってる?」と貸していただいたのが最初の出会い。

 

今年7月に柳楽優弥さん主演でドラマ放送予定でしたが、延期になっています。

www.ntv.co.jp

 

こちらは、子供目線ではなく塾の先生が主人公です。群像劇ですが基本的には大人の目線から描かれています。新米の塾の先生(佐倉先生)が、いい感じに「親の疑問やモヤモヤ」を凄腕先生(黒木先生)にぶつけてくれて、凄腕先生はバッサバッサとそれを斬る、というか極端なくらい計算高い感じで答えてくれます。

 

冒頭、しょっぱなから

「君たちが合格できたのは、父親の経済力、そして母親の狂気だ」。

 

言い切りましたよ!

 

母親の狂気、と言ったら前出の【さよなら田中さん】に出てきた三上くんのお母さんしか思い浮かびません。強烈キャラでしたが、本当に現実にいそうで怖かった… 

 

とはいえ、現実に塾に通うと、色々モヤモヤします。先生のことはみんなニックネームで呼ぶので親しみはあるのですが親は先生のことをほとんど知ることができません。どんな先生がどんな授業をしているのかわからないまま。

 

塾全体のこともよくわからないし、受験までどんな流れで進んでいくかも、模試の意味も、成績の見方も、(はっきり言って子供がしている勉強も)最初はなんにもわからない。積極的に知ろうとしないとウヤムヤに丸め込まれてしまいそうになります。勉強のアドバイスはしてくれるので、親身になって一緒に考えてくれる先生にあたれば儲けものですが、だからといって子供の問題はそう単純に解決しないので、母親の愚痴を聞いてくれたらオッケーくらいに考えていた方がいい感じ。

 

そんな中、この漫画は「親のバイブル」になった気がします。

 現代の受験の背景やぶっちゃけた塾の裏側まで丁寧に描いていて、なるほどなるほど!と思うこと請け合いです。

 

いろんな子、いろんな家庭があるのですが、「塾の合格実績は元々頭がいい子が入ってくるかどうかで決まる。運だ」とか、本音ぶっちゃけまくりで、息子が受験生真っただ中で読んだ私は正直凹んだことも一度や二度ではありません。地頭で全部決まるならこんな勉強する意味ありますかいな…と思ったこと数知れず。それでもなんだか一緒に頑張っている気がしてきて、漫画の中の子の心配までしてしまう。母親って因果な商売ですよ、ほんと。

 

息子がその子たちのことを追い抜いて受験が終わってしまい、その後受験に関することには触れたくなくて、続刊を追いかけることをやめてしまったのでその後の彼らのことはわかりません。完結したら、入塾してから受験までの流れがわかってそれだけでも価値があるんじゃないかと思います。

 

とにかく取材が丁寧です。おまけに舞台が吉祥寺で、一時期住んでいたことがある吉祥寺の懐かしい風景に出会えるのも個人的には楽しみでした。ああ、これあそこの本屋かー、とか、あそこで買ってきたお菓子だわーとか。笑。

 

 【エリート狂走曲】【二月の勝者】。塾や受験の認知度が少し高まったくらいで、40年間ほとんど変わらないことに驚くばかりですが、ひとつだけ言えるのは、渦中にいるときはそんなことを考える余裕はないということですね。笑。

 

最後に、二月の勝者の編集さんのインタビューをみつけたので、載せておきます。

hanakomama.jp

 

追記:ドラマの黒木先生は柳楽優弥さんですが、私の中では坂口健太郎さんです。笑。