みらっちの読書ブログ

本や映画、音楽の話を心のおもむくままに。

友だち追加

カサンドラの嘆き【ギリシャ神話】

 

f:id:miracchi:20210517091724p:plain

こんにちは。

 

最近は金曜日に1本か2本のブログを投稿するようにしていました。今日はイレギュラーですが、ブログ更新します。

 

どうも、このところの新型コロナ感染症をめぐる状況に苛々したりモヤモヤしたりしていたのですが、さっきテレビをつけたら「ミヤネ屋」に峰宗太郎先生が出ていて、「おっ、ばぶ先生、ついにミヤネ屋にまで…!ミネがミヤネに…」と思って、観ていました。

 

ばぶ先生こと峰先生が、昨年の新型コロナ感染症の広がりはじめから、歯切れのいい口調で論理的に感染症の情報を教えてくださっていることは、このブログでも以前から紹介しています。私も、心が挫けずにここまでこられたのは、峰先生のおかげだなぁと思っています。

 

私が峰先生を初めて知ったのは「ホリエモンチャンネル」だったことは前に書きました。当初はそういった動画や、Twitterや各ニュースサイトなどのインタビュー記事などが主でしたが、最近はテレビにも頻繁に出演されるようになりました。

 

Twitter初期の頃は「マシュマロ」という、「マシュマロのように柔らかい言葉で情報や意見を交換しよう」というTwitterサービスを通して、ほとんどすべてのコメントにお返事を書いてくださってましたが(わたしもマシュマロ投げたことありますが、お返事くださいました)、最近はさすがに多くなりすぎて、全返しは無理になってしまったようです。露出が多くなったのは、ほうぼうから出演依頼が来ているからのようで、露出が増えるのに従って、心無い人たちから攻撃されることも多くなり「マシュマロ民」に心配されています。

 

峰先生が、最初の最初から言い続けていることがあります。

 

「たんたんと、基本的な感染症対策を心がけていきましょう」

 

基本的な感染症対策、というのは、マスク・手洗い・三密回避です。データや論文を読んだ情報とともに、最終的にはただそれだけを、これまで長い間、ひたすら、コツコツと、淡々と、訴えていらっしゃいます。

 

「誰かや何かを盲信してはいけません。人間は誰でも間違うことがある。何か情報を得たら、必ず、一次情報に当たるか、公の情報に立ち返りましょう」

 

飛びかう玉石混交の情報の中には、デマもありフェイクもあり、不確かな憶測から明らかな嘘に近いことをテレビで「専門家」が話すこともあり、あるいはテレビの演出上捻じ曲げられることもある。自分の中にも「自分だけは騙されない」と思い込む心がある、そういう不都合な真実を認めよう、とも、おっしゃっています。

 

たまに「うーん、これは一般のほとんどの人は理解できないよ、先生」というような詳細すぎる情報をくださることもありますが(笑)、とにかくブレずに、情報を提供し続けてくださってます。

 

ところが、このところ「同じ話」に飽きてきた人々が、たくさんいるんだな、と感じるようになりました。峰先生にだけではなく、政府の分科会やその他「基本的な感染症対策」を訴える人々に対し、「基本的、基本的ばかり繰り返してるだけ」といったようなことが書いてあるコメント欄もみました。

 

さて、今日の「ミヤネ屋」。

 

宮根誠司さんと梅沢冨美男さんが峰先生の説明がわかりやすい、ととても感心していらしたので「ふっふーん。そうでしょー?」と、まるで我がことのように自慢げに小鼻を膨らませていた私です。笑

 

そしてやっぱり先生は「ワクチンと並行して、接触回避行動をとること、基本的な感染症対策を取っていくしかない」とおっしゃっていました。

 

 

同じなんです。結局は。魔法なんてない。最初の頃は、「検査検査、とにかく検査すればいい」。今は「ワクチンですぐ元の世界なんだから、はやくワクチンを」。そうすれば「万事解決」。そんなこと、ないんです。

 

ひとりひとりが「基本的なこと」をコツコツ続けていくこと、手探りでもその時得られる限りの「正しい情報や知識」を求めていくことしか、今私たちが闘う方法なんて、ないんですよ。それにプラスして検査があり、ワクチンがあり、いずれできる薬があるわけです。

 

でも、どんなに大声を上げようが、届かないんだなあ。どんなに一生懸命伝えようとしても、声は届かない。聞こうとしなければ聞こえない。理解しようとしなければ、わからない。

 

それが、骨身にしみてわかってる人は大声なんてあげないんですよね。怒ったりわめいたりしない。ただひたすらブレずにたんたんと、愚直に穏やかな声で説明を繰り返すだけです。その声に、耳を傾ける私でありたい。

 

 

カサンドラ症候群』というのがあります。これは、アスペルガー症候群など特異な特徴を有する伴侶を持った配偶者は、夫婦間のコミュニケーションがうまくいかず、相手にわかってもらえないことから自信を失ってしまい、世間的には問題なく見える伴侶への不満を口にしても、人々から信じてもらえない。その葛藤から精神的、身体的苦痛を感じる事象を指します。心理療法家シャピラによって1980年代に名付けられたそうです。

 

ちなみに、元ネタになったギリシャ神話のカサンドラのお話は、こんなお話です。

 

カサンドラは、トロイアの王女です。太陽神アポロンに愛され、アポロンの恋人になる代わりに予言の力を授かりました。しかし予言の力を授かった瞬間、アポロンの愛が冷めて自分を捨て去ってゆく未来が見えてしまったのです。それでアポロンを拒絶したところ、怒ったアポロンは、「カサンドラの予言を誰も信じないように」という呪いをかけてしまいました。

 

カサンドラは、パリス(トロイアに厄災を招いたカサンドラの兄)がヘレンをさらってきたときも、市民がトロイアの木馬を運び込もうとしたときも、破滅につながることを予言し人々に訴えたのですが、呪いのせいで誰も信じませんでした。しかもトロイアが陥落した後は、さらなる悲劇的な運命に見舞われます。

 

誰に何を言っても、聞く耳を持ってもらえない。信じてもらえない。それはとても、辛く孤独なことです。むしろあざけりやさげすみを受け「お前が悪い」「頭がおかしい」と言われてしまう、という恐ろしい呪い。

 

この新型コロナウイルスに関連する様々な情報や事象をみていると、つい「カサンドラ」のことを思い出してしまいます。なんか呪いでもかかってるんじゃないかと思うほど、「物事がうまく伝わらない」。

 

それでも一生懸命発信してくれる方や、現場で毎日必死に頑張ってくださっている医療関係の方がた、日々の感染症対策を心がけている方がたは「カサンドラの呪い」をその身に受けつつも、踏ん張っているように思えます。少しでも耳を貸してくれる人が存在するなら、カサンドラよりはマシかもしれませんが、辛く孤独な毎日だと、感じている人も多数いるのではないかと思います。

 

世の中が「見たいものしか見ない」「都合のいいことしか信じない」ということもあるし、「うまく伝えられていない」「発信が世の中を動かす力として弱い」ということもあるのかもしれませんが、とにかくすごく基本的なこと、当り前のこと、一番大事なこと、がおざなりにされている感が強くします。

 

このブログを始めたときに、本や音楽や映画以外のことはここに書くのはやめよう、と思っていたのですが、なんだか妙な気持ちが続いていたので区切りをつけようと、書いてみました。

 

ギリシャ神話のお話、ってことで、ま、いっか。

とにかく、また初心にかえって「たんたんと」頑張るしか、ないんだな。

がんばろ…ただひたすら。只管打座ならぬ、只管対策…