みらっちの読書ブログ

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そこにシビれる!あこがれるゥ!【『ジョジョの奇妙な冒険』と『千夜一夜物語』】

こんにちは。

 

昨年の春は『機動戦士ガンダム』に夢中でしたが、この春は、ジョジョの奇妙な冒険を、アニメで第五部まで観ました。

 

飛ばし飛ばしではありますが、惹きこまれる不条理で突飛な物語。シュールな話は大好物でございます。

 

そしてそして、ちょうどそんなタイミングで、この4/4、めでたいことにシリーズ第六部『ストーンオーシャン』のアニメ化が決定しました。いつ放送になるかは不明ですが、今からとても楽しみです。

 

ジョジョの奇妙な冒険』は、1987年から週刊ジャンプで連載がスタートし、現在シリーズ129巻、発行部数1億部。作者の荒木飛呂彦先生宮城県仙台市出身で、規則正しい生活をして締め切りを確実に守る作者さんとして有名。シリーズに登場する岸辺露伴という漫画家のキャラクターが荒木飛呂彦先生がモデルなのかは不明ですが、この2021年のお正月にNHK岸辺露伴は動かない髙橋一生さん主演でドラマ化しています。荒木飛呂彦先生は、連載開始時以来ほとんど外見が変わらず「老けない(荒木先生のもつ波紋やスタンドのせいじゃあないか?)」と言われています。

 

jojo-portal.com

 

これまでなんとなく食わず嫌いがあって(なにしろシリーズ100巻超えで長いし、なにより絵が独特すぎて)『ジョジョ』を読んだことも、アニメを観たこともありませんでした。1980年代を象徴する「プリンス」的な奇抜なファッションや、「ジョジョ立ち」なども、全然、ピンと来ていませんでしたが、今は完璧にその魅力の虜。

 WOWが「荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋」にて 新作の実験作品を展示 | Webマガジン「AXIS」 | デザインのWebメディア

ジョジョ立ち」はどうやらミケランジェロの彫刻やファッションモデルさんなどのポージングを参考にしているらしく、人体にはかなり無理があるポーズが多いのですが(マニエリスム的とも言われています)、原画でみると独特な色遣いと色気とで相当芸術的。どこか浮世絵的な要素もあるし、アールヌーヴォーみたいでもある。ミケランジェロ&浮世絵&アールヌーヴォーって、実は最高に私好みじゃあないですか(「じゃあないか」もジョジョでは定番の言い回しです)。

 

2018年から全国の美術館で原画展が開催されていますが、現在は延期になっているようです。ブログなどで紹介されているのを見るとすごい迫力なので、一度は観てみたいなと思います。アニメから入りましたが、漫画原作も読んでみたいです(130巻あまりをどう配分しても数年はかかると、息子が試算。その前にお金かかる。プレイステーション5が買える。笑)。

 

ジョジョ』がどんな話か?魅力は?と聞かれて説明するのが難しいです。おそらくだからこそ『ジョジョラー(ジョジョファンの人たちをさす)』がずぶずぶ沼にハマっていくような気もします。読んでor観てみて初めて理解できる魅力。しかも強力な。

 

とりあえず、おおざっぱに「イギリス人ジョースターさんちの歴史」の物語です。最初の舞台はイギリス。不思議な石の仮面を手に入れたジョースター家に石仮面の呪いが降りかかるのですが、ジョースターさんの血筋は「清く正しく美しい精神(黄金の精神と呼ばれる)」の持ち主だったので、ジョースター家一族と呪いに取り込まれてしまったジョースター家の養子「ディオ」との壮絶な戦いが始まります。ディオは石仮面によって「呪われたアンデッド・吸血鬼」となり、ジョースター家の子々孫々に襲い掛かるのです。敵は時にディオだけではなく「不老不死」「強力な超能力」をもつ存在を相手にしながら、戦いはイギリスからアメリカ、日本とエジプト、日本(仙台)、イタリアと舞台を変え、時を超え(ディオと闘ったジョナサン・ジョースターからその孫、その孫、その孫や子供、その子供…)、現在はついに「パラレルワールド」に舞台を移し、シュールで、奇妙で、不思議なファンタジーが連綿と続いています。

 

戦い方は時代によって変わり、最初は「波紋」という「気」のような生体エネルギーを扱うのですが、その後その波紋エネルギーは実体化し可視化され「スタンド(能力)」と呼ばれる「幽波紋」(超能力を持つ霊の相棒みたいな存在)になります。スタンドの能力も様々に変化し、それぞれの個性やキャラクターに応じたスタンド使いが現れます。

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↑これは第五部の主人公「ジョルノ・ジョバァーナ」とそのスタンド「ゴールド・エクスペリエンス」。この誇張された「バァァン」の擬音もジョジョの特徴のひとつ。登場人物の名前やスタンドの名前は、荒木先生が好きなロックミュージシャンの名前だったり、曲の名前だったりします。

 

ムキムキの肉体で戦う初期の頃から、基本的に戦いは頭脳戦です。ただ力と力をぶつけ合うだけではなく、知恵比べみたいな戦闘シーンが魅力のひとつです。最初は肉体美を誇る人たちのガチンコ勝負みたいなところがありましたが、その後少しずつ細マッチョからモデル体型に変わってきています(それにつれ露出度も高くなっています)。

 

とにかく「奇妙」な「冒険」なのは間違いなく、私がアニメを観て最初に思ったのは「すごいタイトルだな」ということでした。ここまで何十年も連載を続ける漫画でこうまで的確に内容を表しているものがほかにあるだろうか、いやない(断言)。ワンピースだってドラゴンボールだって「あれ?ひとつなぎの秘宝探しってどうなってる?」「ドラゴンボールって集めてるんだっけ?」みたいになる時期が必ずありますが、『ジョジョ』はブレなく常に「奇妙」な「冒険」であり続けていて、すごい。

 

第五部を観たばかりなので、今はブチャラティのカッコよさに痺れて憧れてます。笑。

 

第五部はイタリアン・ギャングの抗争の話です。最初ブチャラティを見たときは「なんじゃこのキャサリン(「銀魂」に出て来るキャラ)はッ!」と思っていたし、最初の登場回は、全員、なんだろうこの変な恰好の変な人たちはッ!と思いましたが、最終回の時にはもう愛が溢れてました。戦隊と同じ原理。笑

 

荒木飛呂彦先生はキャラクターをつくるときに60項目に及ぶ身上書を作成されるそうで、各キャラクターにきっちり誕生日を設定しているらしく、話中でも、わざわざ「〇〇座生まれ」とか説明しているところがあります。

 

ブチャラティは9月27日てんびん座生まれ。常に自分にとっての「正義」を貫こうとします。状況判断力があり、仲間の和を尊び、バランス感覚に長けているリーダーです。

ジョジョ 第5部 Vol.2 気高き覚悟 - LINE スタンプ | LINE STORE

このセリフは、いかにもブチャラティらしい、とも言えます。


「覚悟はいいか?
オレはできてる」

なんて名言もありますね。

ブログタイトルのそこにシビれるあこがれるゥ!」も1巻に出て来る単なるモブキャラの台詞なのにジョジョラーの間では名言中の名言です。とにかく『ジョジョ』は第一巻から凄まじい名言の宝庫でもあります。ジョジョ名言集というのもあるし、ガンダムに引けをとらない印象的なセリフがざっくざくです。

 

ジョジョの奇妙な冒険』は、私の中で『千夜一夜物語』を彷彿とさせます。

 

高校時代、古いボロボロの岩波文庫の『千夜一夜物語』(おそらく1940年刊の重版もの)を、図書室から借りて全巻制覇しました。さすがに超マイナーな岩波全巻を借り上げる人が珍しかったのか司書さんに顔を覚えられてしまい、最終巻を借りたときは「おめでとう」って言われてしまいました。『千夜一夜物語』の内容をご存じな方の前で言うのは結構恥ずかしい話です。でも、いい思い出。

 

岩波文庫の『千夜一夜物語』は、2019年に10年ぶりに重版したそうです。ただ、それが13巻とあったので、あれ?とは思っています。古い岩波は20巻超えだったと思ったのですが。うろ覚えなので定かではありません。かなりエログロだったので子供向けの『ガラン版』ではなかったのは間違いなさそうですが、『バートン版』だったのか『マドリュス版』だったのか判然としません。訳者さんが仏文学者さんだったので『マドリュス版』だったのかな。

 

どうやら昨年、『ガラン版 千一夜物語』(全6巻、岩波書店)の新訳が出たそうです。立派な装丁でお値段も結構高いのと、子供向けに綺麗にまとまってる『ガラン版』なのでおそらく買うことはない気がします。やっぱり『千夜一夜物語』は綺麗な美談じゃあおさまらないのがよろしいのです。

 

千夜一夜物語は相当にエログロでシュール。あれを映像化するのは絶対無理です。笑。そこいくと、少年漫画である『ジョジョ』は、残酷なシーンも多いけれども少年漫画としてのラインを超えることはないのがよいですね。

 

さて、どんな点が『千夜一夜物語』と似ているか、というと、『千夜一夜物語』では、妻の不貞に人間不信になったスルタン(イスラームの王様)の新しい妻たち(シェヘラザードとその妹)が主人公。スルタンは毎日新しい妻を迎えては、翌朝には首をはねて暮らしていました。シェヘラザード姉妹は夜な夜なスルタンの伽の相手をして、上手いこと話をしなければスルタンに殺されてしまいます。とにかくスルタンの気持ちをなんとか「話の続き」に向けさせなければならないわけです。

 

心理学で『ツァイガルニク効果』というのがあって、「達成できなかった事柄や中断している事柄のほうを、達成できた事柄よりもよく覚えている現象」のことを指します。ゼイガルニック効果、と言うこともあります。

 

千夜一夜物語』はそのツァイガルニク効果において超絶技巧というくらい、話のつくりが上手いのですが、『ジョジョ』もすごいんです。基本的に、ドラマや漫画、アニメ、小説、あらゆる連載物にはこの効果がつきものなのですが、それにしてもこのテクニックをこれほど効果的に使っている物語は珍しいと思います。長寿連載とコアなファンが多い理由がよくわかります。

 

そしてもうひとつの共通点は『語り』ということ。『千夜一夜物語』はシェヘラザート姉妹がストーリーテラーです。時に話の中の話が展開し、主人公が入れ替るため、話者も入り乱れますが、最後にシェヘラザードが「~というわけで、続きは明日」とまとめる形式。一方『ジョジョ』も、時々登場人物の誰かがストーリーテラーとなったり、小説的な説明が挟まれたりと、こちらも一貫性はないのですが、基本的には主人公以外の話者がいて、実況のように語りあげる形式も多用されます。双方「語り部の魅力」があると思います。

 

それから、『奇妙』さ。『ジョジョ』はファッション含めてとにかく設定の奇抜さが突き抜けていますが、大枠は超現実的で不条理なのに細部が意外と論理的。能力について、唐突に科学的な説明が入ったりします。どちらも謎は謎のままに突き進んでいくパワー型の物語。最初のあれはなんだったんだ、と思うんだけど、お話が終わってしまえば、解決はしていなくても謎のままでも、ちゃんと風呂敷はたたまれて「すっきり」している不思議。

 

最後に『知恵比べ』です。『ジョジョ』の説明のところでも「戦い方が肉弾戦より知恵比べだ」と書きましたが、『千夜一夜物語』でもそうなんです。相手を出し抜く、いっぱい食わせる、力業のときもありますが、そういう知恵比べが多いのも特徴だと思います。

 

たとえば『千夜一夜物語』の中で「アラジンと魔法のランプ」なんかはほんの一部なのですが、ランプを手に入れるとその人が精霊の主人になる、とか、魔法のじゅうたんで空を飛ぶ、とか、奇妙で突飛な話なのに、「語りの魅力」でぐいぐい物語に惹きこまれてしまい、アラジンは行く手を阻む障壁に対しその「不思議な能力」と「知恵」で軽々と乗り越え、「はい、ここまで。あとは明日」と延々、やられる。あの感じは、まさに『ジョジョ』と共通のものという気がします。そして、便宜的最終回があるだけで、たぶん話はいつまでも終わらない。永遠に続けることが可能な「物語」なのです。

 

これまでの感想はとにかく「あー面白かった」。でもまだまだ話は続くし、読んでいないところもあるから、まだまだ楽しめる!アニメ第六部も本当に、楽しみです。語り尽くせぬ魅力のあるジョジョ!ブラボー!

 

 『ガンダム』に『ジョジョ』と、この1年「食わず嫌い」を克服しているので、これはもしかしたらついに『キングダム』もアニメでいけるかもしれない、と密かに思っている今日この頃です(絵とコマ割りがダメで1巻で挫折しているキングダム)。