みらっちの読書ブログ

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絶対に信者じゃないといいはる信者は嘘つき村の村長【新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実/峰宗太郎・山中浩之】

こんにちは。

 

このブログでもたびたび話題にしている峰先生の本が出版されました。

あ。今日出版でした。

 

 

この本は、日経ビジネス電子版で5月から連載されている「編集Yの『話が長くてすみません』」という峰先生のインタビュー記事をまとめたものです。

business.nikkei.com

 

business.nikkei.com

 

5月の「その1」から9月の「その6」までの記事を、単行本にまとめてあります。インタービュー形式は変わりませんが、そのままではなく加筆修正されて読みやすく編集されています。もともと鍵付きの記事なので、日経の読者登録をしていないと全文は読めませんが、無料の登録でも月何本かは記事が読めるので、私はそれで毎回読ませていただいてました。編集Yさんこと山中浩之さんの、すごく勉強なさっているのに謙虚な、無知な我々に寄り添ってくれるインタビュアーとしての姿勢も好感度が高いです。本の巻末には山中さんが勉強なさった本の目録もついていてとても親切。

 

内容は、基本的なところから情報に対する心構えまで、読みごたえはあります。コロナ感染症についていまいちどおさらいすると、実際には知っていたような知らなかったことがこの本でクリアになることがあると思います。

 

それで、私はだいたいの内容は既にネット記事で読んでしまっていたので、細かいところは後でゆっくり読むことにして、真っ先に「あとがき」から読みました。

 

そしたら峰先生「ここまでお読みいただき大変ありがたく思います(あとがきから読まれる方もいらっしゃるかもしれませんが)」ってお見通しでした。笑。

 

私がたびたび峰先生のことに触れるのは「峰信者」だからではありません。いやいやたぶん信者じゃないよ。信者じゃないと思う。信者じゃないんじゃないかな。ま、ちょっと覚悟はしておけ(byさだまさし)

 

このコロナ禍の時代、玉石混交の情報が乱れ飛ぶなかで、峰先生は自身が意見を求められメディアに露出した当初から「インフォデミック(大規模な情報の氾濫・流行)を懸念されていて、「(自分を含めて)専門家だから、肩書があるから、業績があるから、資格を持っているから、テレビが言っているからと情報を真に受けてうのみにしないで」「必ず一次情報にあたって」「公的情報を見比べて」「自分の目で確かめて、自分で判断できるように勉強して」と言い続けられてきました。こういう未知のウイルスに向かっていくときに、デマに扇動されて動く人や集団や偏見ほど恐ろしいものはない、と思っていらっしゃるようです。事実、そうだと思います。

 

あとがきで峰先生は、タイトルの「不都合な真実」について、

 

「情報を簡単に信じる」「一度信じた情報を疑わない」姿勢を、おそらく私やあなたを含めた人間全員が持っている、ということです。センセーショナルな話題や、一部の言説をバランスを欠くまでに信奉してしまうのは、自分自身を含めて、人間ならば普通にあることです。だからこそ、感染症対策のような一人ひとりの行動が大事な事象では、情報と接する際に「自分は騙されやすい、信じやすい、信じたことを疑うのは難しい」と常に唱えているくらいに慎重であるべきです。

 

と言っています。そしてそれは、新型コロナだけの話ではない、常日頃から健康情報、医療情報に接するとき、分野を超えてあらゆる情報に接するときに共通した「不都合な真実」だと知っておくべきだと結んでいます。

 

「不都合な真実」ってまるでアル・ゴアみたいなタイトルだなとちょっと訝しく思ったのですが、それは「誰かが隠蔽したことを暴く」というようなことではなく、「認めたくない自分自身も見つめて」と言う警鐘だったのねと深く納得した次第。「無知の知(ソクラテス)」、「これを知るをこれを知るとなし、知らざるを知らざると為す、これ知るなり(論語)」ですね。

 

とにかく峰先生は「ばぶ先生」の異名?を持つ通り、あらゆる場面で表現に配慮し言い方がソフトなのですが、それはおそらく先生が実は毒舌家であることの裏返しなのかな、と常日頃思っています。先生はきっぱりざっくりばっさり言い過ぎることでこの世の辛酸をなめてきた方なんじゃないかと勝手に妄想しております。

 

 コロナウイルスの脅威がわかり始めた頃、NHKのニュースでしきりに「正しく恐れて」と言っていたのが印象的でした。真っ先に思ったのは「それがいちばん難しいじゃないか」と言うことでした。「正しく恐れる」には知識が必要です。相手を「正しく」知らずに「正しく」恐れることはできません。でも当時は全くの未知のウイルスとされていました。そう言うなら、まずどうやって「正しく」恐れればいいのか教えてほしい、と思ったのを憶えています。

 

その「正しく恐れる」やり方、方法、メソッド、を、峰先生は教えてくれたように思います。だから彼の発信には常に目を光らせ(こわー)注目してきました。そしてひとりのひとだけの言葉にとらわれないように、いろいろな人の書いたもの、話したことを見たり聞いたりするように心がけました。そして最終的に心がけたのは「情報を入れすぎない」ということでした。ある程度情報を入れたら一次情報をたどれないものは入れない。時間を制限して情報を入れる、など。

 

「確実」で「絶対」な情報ソースなどないのです。それは公的情報も含めてです。簡単に手軽に手に入り、正しいことが保証されている、そんな情報はないのです。90%正しいことを言っている人でも間違いが入ることも当然あるわけです。さらにいえば詐欺師は必ず真実を混ぜて嘘をつきます。

 

商売や保身のために故意に情報を操作し扇動する悪い人も中にはいる、ということです。峰先生が言いたいことは、「面倒くさがってはいけない」「根気強く継続的に」「たんたんと」ものごとにあたっていく、ということだと思います。この「たんたんと」というのはツイートで峰先生が日々、言い続けていることです。「たんたんとまいりましょう」。それが心身を患いやすい人には心休まる言葉です(私を含め)。

 

非常につまらないことや単純に思えること、ある意味で簡単にでくだらなそうなこと、それが妥当である場合も多いのです、と先生は最後に結んでいます。先生のいう感染症対策は、

 

栄養と睡眠をしっかりとる

手指衛生の徹底

咳エチケット

三密を避ける

体調不良者と接触しない。体調不良なら外出しない

マスクの着用

充分な換気

うがいについては水で十分

 

以上。だそうです。

とても普通な、今日ではだいぶ生活習慣に根付いているようなことばかりです。特に「栄養と睡眠、よく食べてよく眠ることは予防のゴールデンスタンダード」だそうです。

 

でもね。最近思うのです。

先生のような医療従事者の方が考える「手指衛生」と、普通のわれわれが考えている「手指衛生」の定義は果たして同じなのか、と。

たぶん、違う。

違うから、齟齬が生まれる。先生たちは「手をよく洗って綺麗にしておけば大丈夫」と言う。それを私たちは「やってるよー」と言う。でもその現実には大きな隔たりがあるんじゃないか、と。

 

「手を洗う」って、本当にシンプルな言葉ですが、水には何分何秒さらすの?石鹸はどれくらい泡立てればいいの?手の動かし方や力加減は?と追及すると「あーもーめんどくせー」になる。毎回毎回やってられるかーい、ってなる。かのゼンメルヴァイスさんも「手を洗う」というのは「消毒液で洗う」という定義でしたからね。ただ水で洗えばいいんじゃなかったんですよね。疎ましがられて、精神を病みましたね。

 

「三密を避けよ」と言うから「避けてるよー」と言う。でも実は三密のうちひとつは密になっていたりする。でも私たちは「ちゃんと気を付けていた」と思ってる。

 

「感染症対策しっかりやっていたのに」と言うけれど、それはほんとうに「やっていた」のか、医療従事者の方から見て「それはやってるうちにはいらないね」「間違ってるよ」ということを自信満々にやってるからじゃないか、と思ったりもします。無駄な消毒ばかりして実は本当にやるべきことはやってない、決定的な間違いをしている、とか。それだから、GOTOで感染が広がる、ということが起きるんじゃないか、と。

 

言葉の定義ってものすごく大事だと思うんですよ。それぞれが「真実」と思うことが違えば、それは「やってるのに何で?」ということになっちゃう。だから先生たちがたとえばものすごく効率よくタイミングよく、正確な方法で手を洗っているのに対し「簡単でシンプルなことなのに」っていうけれど一般人にとっては、タイミングとかではなく手を洗い、不正確な洗い方をして「洗った」と認識しているのでは雲泥の差が出てしまう。もうそこから、スタート地点から、すれ違っている気がすることがあります。三密や換気はいわずもがな。みんな「わかってる」というけど「できてない」。厳密に守ろうとすると「やりすぎだよ」「ばかみたい」と人から白い目でみられたりして。現実に、やりすぎの人もいますけどね(私も含め)。

 

諸外国は、そのへん、ひとりひとりの考え方が違う前提でたぶん、厳しいのだと思います。それぞれの人に任せておいたら絶対ダメだとわかってる。だからロックダウン、だから渡航二週間隔離は指定ホテルで絶対の条件です。日本は緩い。ゆるすぎます。性善説なのか、人間を信じすぎなんじゃないかと思うことがたびたびあります。

 

ちなみに先生は「食品からの感染はないから買い物を消毒する必要ない」と言いますが、私ダメなんですよね。どうしても気になっちゃう。無駄に拭いちゃう。「荷物やモノではウイルスは減り続けるだけで増殖しない。プラスティック3日とか段ボール40時間というのはウイルスをこすりつけて実験した結果であって現実生活のなかでそこから感染は考えにくい」とも言ってますが、とにかく心の安寧のためには「儀式」を必要とする人もこの世にはいるので、そういう人は好きなだけやりすぎればいいと思います(私も含め)。ただ、人に強要してはいけませんね。

 

あまり気にしすぎるのも良くなくて、やっぱりこのコロナ禍で心の病気が悪化した人は多いと思うし、これまでそうではなかったのに発症してしまった人もいるかもしれません。産後うつにコロナが拍車をかけて現実に産後の女性、育児中の女性が大変なことになっているという報道もあります。経済のことを考えればあらゆることを制限すればいいというものではなくて、そこの舵取りが本当に難しい時代だと思います。

 

その時代に基本的な知識とともに「落ち着いて、たんたんとやっていこう」と呼び掛けてくれる峰先生の著書、ぜひご一読をお勧めいたします(ってやっぱり峰先生の手先!笑)。本を買うのはめんどくさいという方は、日経電子版に無料登録して「話が長くてすみません」の記事をお読みになることをお勧めします(いとも簡単に峰先生を裏切って日経に寝返った!)。